パーセンタイル値
/ぱーせんたいるち
数値データを小さい順に並べたとき、初めのデータから数えて全体の何パーセントに位置するデータかを示すものが「パーセンタイル値」である。例えば、1時間ごとの濃度データが1年分(8,760時間分)ある場合、その98パーセンタイル値とは小さいほうから8,585番目(高いほうから176番目)の濃度データのことである。この例の場合、著しく高濃度のデータ(全体の約2%のデータ)を「特殊な値」などとして無視した場合の最大濃度と同じである。
パーフルオロオクタンスルホン酸 (PFOS)
/ぱーふるおろおくたんするほんさん (ぴーふぉす)
POPs条約の第4回締約国会議で附属書への掲載が決められた物質の一つで、我が国では化学物質審査規制法の第一種特定化学物質に指定され、その塩と併せて原則として製造・輸入が禁止された物質のこと。消火剤や金属加工のエッチング剤などに使われてきたが、難分解性・高蓄積性といった特徴があるため、水環境中で高い頻度で検出され、生物の体内での蓄積も問題となっている。
化学物質審査規制法施行令(第1条)における物質名の表記は「ペルフルオロ(オクタン-1-スルホン酸)」となっている。
バイオマス
/ばいおます
本来は生物の(bio-)存在する数量を質量(mass)として表すための表現であるが、一般には、そこから転じて生物起源のエネルギー資源のことを意味する。石油などの化石燃料も、太古の昔まで遡れば「生物起源」であるが、直ちに再生できるエネルギーではないため、バイオマスには含まれない。農作物の加工残渣や下水汚泥などが該当している。
排ガス基準
/はいがすきじゅん
自動車などの排気ガスの排出量として遵守すべき基準のこと。自動車などの排気ガスは、その走行状態によって汚染物質の濃度や排ガス量が大きく変化するため、通常は自動車などの走行状態に応じた基準値として、試験モード(例:10・15モード、JE05モード)を定めた上で"g/km"や"g/kWh"などの単位で排ガス基準が設定されている。
排ガス規制
/はいがすきせい
主に大気汚染防止法による排出ガス濃度に対する規制のこと。大気汚染防止法では、ボイラー等の固定発生源や自動車等の移動発生源に対する排ガス規制が設けられている。移動発生源の場合、自動車NOx・PM法などでも排ガス規制が行われている。
自動車に対する排ガス規制は窒素酸化物(NOx)や非メタン炭化水素(NMHC)等を対象に設けられ、技術開発の進展等を踏まえ、これまで段階的に規制値が強化されてきた。
廃棄物
/はいきぶつ
廃棄物処理法の第二条第一項で定義されたもので、ごみや燃え殻などの汚物や不要物(気体状のものなどを除く)のこと。廃棄物処理法では一般廃棄物と産業廃棄物に大別されている。廃棄物に対比する用語として、しばしば「有価物」という用語が使われるが、これは例えば事業者間での取引に伴って「引き渡すための対価を受け取ったか否か」によって判断され、廃棄物処理法が適用されるかどうかの判断が分かれることがある。
同じ不要物でも「下水」や「下水汚泥」は下水道法に基づいて処理されるのが一般的であり、基本的に廃棄物には該当しない(廃棄物処理業者に処理を委託した下水汚泥などを除く)。
廃棄物種類
/はいきぶつしゅるい
廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に大別され、そのうち産業廃棄物については廃掃法第2条第4項及び廃掃法施行令第2条で「燃え殻」や「紙くず」などに分類されている。PRTRの届出外排出量の推計では、このうち産業廃棄物の分類(約20種類)を廃棄物種類と定義し、その種類ごとに中間処理量や化学物質の平均含有率などの推計を試みている。
我が国のPRTR制度においては、化管法施行規則の改正(H22.4.1施行)により、「廃棄物の処理方法」等と共に届出事項に追加された。
廃棄物処理施設
/はいきぶつしょりしせつ
産業廃棄物や一般廃棄物の中間処理やその最終処分を行うための施設のこと。産業廃棄物の中間処理施設であれば、「汚泥の焼却施設」や「廃プラスチック類の破砕施設」などに分類されている。産業廃棄物の中間処理施設は単純合計で全国に約18,700施設(平成26年4月1日現在)があるが、焼却施設等の場合は複数の施設種類の設置許可を同時に得ている場合が少なくないため、正味の施設数は上記の数よりも少ない。
中間処理施設の場合、その多くは一定規模以上の施設(例:汚泥の脱水施設なら、処理能力が1日10立方メートル以上の施設)に限って「廃棄物処理施設」に該当し、それに満たない施設は廃棄物処理法が規定する廃棄物処理施設には該当しない。
廃棄物処理法 (廃掃法)
/はいきぶつしょりほう (はいそうほう)
正式には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」といい、廃棄物の適正な処理等によって生活環境の保全などを図ることを目的とした法律。廃棄物を一般廃棄物と産業廃棄物に大別していることが大きな特徴で、一般廃棄物と産業廃棄物の適正処理は、それぞれ市町村と事業者(排出事業者)に第一義的な責務があると規定している。1998年からは廃掃法の改正によって産業廃棄物にマニフェスト(産業廃棄物管理票)を添付することが義務づけられ、排出事業者が適正処理の完了を確認することが可能となった。
排出インベントリ
/はいしゅついんべんとり
化学物質などの排出量を発生源ごとに把握(推計)し、それを発生源毎の数量として整理したもの。排出量の総量と内訳を把握するために作成するものであり、環境政策においては、発生源毎の対策の必要性や取組の進捗状況の把握などを目的として作成されることが多い。
例として、二酸化炭素などの温室効果ガス、ダイオキシン類、揮発性有機化合物(VOC)、水銀(大気への)の排出インベントリなどが挙げられる。
排出基準
/はいしゅつきじゅん
環境基準の達成等を目的として、大気汚染防止法や水質汚濁防止法等に基づき、工場等からの排気ガスや排水に含まれる汚染物質の濃度等の許容限度として定められたもの。
例えば、排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)の排出基準は、ボイラーであれば排ガス中のNOx濃度(ppm)として基準値が定められ、自動車であれば走行距離当たりのNOx排出量(g/km)等として基準値が定められている。
排出規制
/はいしゅつきせい
施設の排気口や排水口、自動車の排出ガスについて、その濃度や排出総量について規制することを指す。例えば、大気汚染防止法では、揮発性有機化合物(VOC)について特定の施設の排出口での濃度について規制値を定めている。
排出規制海域(ECA)
/はいしゅつきせいかいいき(えか)
「大気汚染物質放出規制海域 (ECA)」と同義。
排出係数
/はいしゅつけいすう
化学物質などの環境中への排出量を推計するときのパラメータの一つ。排出の原因となっている事業活動などの規模を「活動量」として表し、その活動量当たりの排出量を「排出係数」として表し、過去の実測データなどに基づいて経験的な値として表されることが多い。例えば、自動車に給油したガソリンの容量(kL)あたりのベンゼンの排出量(mg)の割合を、給油時の排出係数(mg/kL)として表すことができる。
化学物質の使用量(kg)に対する排出量(kg)の割合など、両者の次元(単位)が同じ場合は「平均排出率(%)」として表されるのが一般的であるが、平均排出率を含む広い意味で排出係数と呼ばれることもある。
排出源
/はいしゅつげん
化学物質などが排出される場所や製品等の区分のこと。「塗料」や「農薬」といった製品種類や「自動車」といった移動体種類などが該当する。
排出率
/はいしゅつりつ
事業所単位の場合、化学物質等の取扱量に対する排出量の割合のこと。施設や工程を単位とする場合は、ある施設や工程に投入される数量に対して環境中に排出される割合のこと。
媒体
/ばいたい
環境の構成要素である「大気」や「公共用水域」、「土壌」などのこと。例えば「媒体別排出量」と表現するときは、化学物質の環境への排出量が「大気への排出量」と「公共用水域への排出量」などに分けられた排出量であることを意味する。
破過
/はか
排ガス処理や水処理において、活性炭などの吸着体が吸着飽和に達し、物質が吸着されずに通過すること。自動車のキャニスタ(活性炭を入れた容器)においては、燃料タンクから蒸発したガソリンがキャニスタで吸着できなくなると大気へ排出される。
バグフィルタ
/ばぐふぃるた
装置隔壁上の特別なフィルターにダストを捕集し除去する形式の集じん装置を隔壁形式集じん装置とよぶが、バグフィルターは、その装置に取り付ける円筒形又は封筒形のフィルターである。フィルターに使用するろ布は、フィルターの特性(捕集性、耐食性など)に応じて、木綿、ポリエステルなどの材質、織り方や表面加工が異なるさまざまな種類のろ布が使用される。
なお、バグフィルターを使用する隔壁形式集じん装置には、振動形、逆圧形、パルスジェット形などさまざまな種類のものがあるが、「捕集したダストを振動や気流によりふるい落とす」とういダスト除去の基本的な仕組みは同じであり、粉じんの除去率は他の集塵機と比べ非常に高い。
参考 : 新公害防止の技術と法規2014 ((社)産業環境管理協会)
曝露
/ばくろ
ヒトや生物が有害な化学物質を体内に取り込むこと。化学物質による環境リスクの評価は、化学物質の有害性の程度と曝露の程度を両面から評価することによって行われる。
同じ意味で「暴露(ばくろ)」と呼ばれることもあるが、この用語の意味は「暴く(あばく)」ではなく「曝す(さらす)」ということであるため、漢字本来の意味を優先して、ここでは「曝露」と表記した。
曝露経路
/ばくろけいろ
人が化学物質を摂取する場合、食物や飲料水を経由したり、呼吸によって取り込んだり、複数のルートが考えられるが、その曝露に至る経路として想定されるものを「曝露経路」と呼ぶ。曝露経路は、対象とする化学物質の使われ方や物性値(例:沸点、水溶解度)等によって異なる。
曝露シナリオ
/ばくろしなりお
化学物質の曝露評価を行うため、想定される曝露経路やその方法、状況などを具体的に記述したもの。
化学物質が人や生態系へ及ぼす影響を評価する際には、人や生物がその化学物質に曝露される量を定量的に表す必要があり、人が作業環境中で直接曝露される場合や環境を経由して間接的に曝露される場合など、想定されるさまざまな曝露経路が示されるのが一般的である。化学物質の曝露シナリオは、化学物質の用途や性質などを考慮して設定されることが多い。
曝露性
/ばくろせい
人の健康や生態系に対して化学物質などの悪影響が及ぶ可能性や曝露される程度のこと。化学物質による悪影響を考える場合、人や生態系がその化学物質に曝露された場合に発現すると見込まれる悪影響の程度を有害性と呼び、その有害性と曝露性の両者を併せて環境リスクが評価される。
ハザード比
/はざーどひ
化学物質のリスクの程度を表す指標の一つ。曝露量÷耐容摂取量で求められ、その値が"1"より小さければ化学物質によるリスクはないとされる。
発がん性
/はつがんせい
正常な細胞に対してがん(悪性腫瘍)を誘発する又は発生率を増加させる性質のこと。通常、発がん性の評価はマウスやラットを用いた動物試験により行われるが、膨大な期間と費用を要することや、評価を必要とする化学物質等が増加していることなどから、細菌や哺乳類の培養細胞を用いたスクリーニング試験も広く用いられている。国際がん研究機関(IARC)では、様々な物質や要因などのヒトに対する発がん性を評価し、分類結果を公表している。
>>> IARCによる発がん性の分類結果
パッシブサンプリング
/ぱっしぶさんぷりんぐ
河川や大気などのモニタリングにおけるサンプリング方法の一種。水質調査の場合、水中に専用の吸着剤を一定期間浸漬し、吸着剤に物質を吸着・濃縮させることでサンプルを得る方法などがある。回収した吸着剤への吸着量を測定することで、一定期間における平均濃度を推定することが可能である。グラブサンプリングのように瞬間値としての濃度を捉えることはできないが、環境中の存在量の変化が大きい物質(農薬など)や、低濃度の物質の存在状況を把握するために有効な手法であると考えられる。
発生源
/はっせいげん
化学物質などが排出される場所や製品等の区分のこと。個々の工場・事業場のように地理的・空間的な場所を意味する場合もあるが、「塗料」や「農薬」といった製品種類などを表す場合もある。環境省が作成しているVOCの排出インベントリでは、後者の意味であることを強調して「発生源品目」と呼んでいる。
BAT
/ばっと
"Best Available Technology(Technique)”の略称であり、日本語では「利用可能な最良の技術」と訳される。POPs条約では、best available techniquesであり、条文に定義が記載されている。その「技術」は、排ガス処理技術や排水処理技術を示す場合と、その他、設備の設計、建設、維持、操作、廃止のすべてが含まれる場合がある。また、水俣条約の第8条、大気への排出では、附属書Dの発生源の分類(石炭火力発電所など)の新規の発生源については、「技術」だけではなく"Best Environmental Practice(BEP)"(環境のための最良の慣行)を含めたBAT/BEPの利用が義務づけられている。
BAT規制
/ばっときせい
BATレベルとして設定された濃度等による規制を行うこと。米国では、事業所ごとにBATレベル(排水基準値)が記載された排出許可証が交付され、操業の際は、これを遵守することが厳しく求められる。
BATレベル
/ばっとれべる
工業技術的・経済的に低減可能なレベルのことであり、BATを適用した際に実現される濃度等のこと。化審法の運用通知では、第一種特定化学物質の副生については、その物質による環境汚染を通じた人の健康を損なうおそれがなく、その含有割合がBATレベルまで低減されている場合には、当該副生物を第一種特定化学物質とはみなさないとの記載がある。しかしながら、BATレベルの定義はなく、副生した第一種特定化学物質の存在が確認されるたびに、そのBATレベルを検討している。諸外国では、排ガス濃度などのBATレベルの設定方法について詳細なガイドラインなどが用意されており、一定の拘束力を持つ場合もある。
ハブ高風速
/はぶこうふうそく
風車のハブ高(風車の羽根の中心部分の地面からの高さ)における風速のこと。ハブ高風速が風車の定格風速(定格出力での発電が可能な風速)に近いほど発電効率が高い。また、ハブ高風速から風力発電施設の年間予想発電量を算出することもできる。台風接近時などの強風下では風車の故障リスクが高くなるため、風力発電施設では、風車のハブ高風速を測定することで発停(発電機の稼働)を制御している。
バラスト水
/ばらすとすい
船舶では貨物を積載した状態を考慮した設計がなされるため、空荷の場合には、「重り」の役割となる海水(=バラスト水)を船内のバラストタンクに積み込むことで安定性を確保する。一般的には、荷を下ろした地域の海水を詰め込み、到着地で荷積みの際にバラスト水を海洋中へ排出する。
国際海事機構(IMO)によると、世界全体では1年間に30〜50億トンのバラスト水が船舶によって国際間移送されているといわれているが、生物の混入したバラスト水が遠く離れた海域で排出されると、世界中に生物が拡散して生態系が破壊されるなど、深刻な被害が発生するおそれがある。したがって、バラスト水の排出について何らかの管理が必要とされている。
バラスト水管理条約
/ばらすとすいかんりじょうやく
2004年に採択された「船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約」の通称。細菌、微生物も含めた海洋生物が、バラスト水を介して本来の生息地ではない地域に移動することにより生じる環境への危険等を防止することを目的とした条約(2017年9月8日発効)。
バラスト水中の生物を一定数以下の基準になるよう処理することが現存船も含めた全ての国際間航行をする船舶に義務づけられる。
なお、条約の名称は、海防法では「船舶バラスト水規制管理条約」と表記されている。
バラスト水交換
/ばらすとすいこうかん
船舶のバラスト水を介した生物移入を防止するための手法の一つであり、船舶バラスト水規制管理条約附属書B-4規則に規定されている。外洋においてバラスト水を交換することによって、侵略性の生物種が他国の沿岸域に排出される可能性を低減させる。バラスト水交換は、BWMSを用いるバラスト水管理を補完する手法として位置づけられており、BWMSを搭載するまでの経過措置等として用いられている。バラスト水交換の基準は、同附属書D-1規則において、バラスト水量の95%以上を交換するなど定められている。
バラスト水処理システム(有害水バラスト処理設備)
/ばらすとすいしょりしすてむ(ゆうがいみずばらすとしょりせつび)
船舶バラスト水規制管理条約では、バラスト水を海洋等に排出する際の生存生物量等の基準を定めており、当該基準を遵守するためにバラスト水の殺菌処理等を行うため船舶に搭載する装置のこと。BWMS(Ballast Water Management System)とも呼ばれる。
装置の性能に関する審査・承認は条約のガイドラインG8に基づいて各国の主管庁が行うこととされているが、活性物質(→別掲)を使用する装置については、環境への影響に関するリスク評価等を行いIMOの承認を受けることが必要となっている。
ばらつき
/ばらつき
アンケートや測定などでデータが得られたとき、アンケートの回答者や採取した試料等によって異なった値になるのが一般的であるが、その不規則に値が乱れる程度のこと。一般に、ばらつきの大きなデータに基づいて平均値を算出した場合、その平均値の信頼性が低くなる傾向がある。 したがって、このばらつきの程度を定量的に示す方法として、算出された値の信頼区間を示す方法が使われることがある。
ばら積み輸送
/ばらづみゆそう
包装されない状態で大量に輸送すること。船舶ではタンカー、鉄道ではホッパー車、自動車ではトレーラー等で輸送される。
船舶の場合、船体のバルク(貨物室)に貨物を積載するが、貨物が液体の場合はオイルタンカーやケミカルタンカーなど、輸送する貨物の性状等に応じた船舶で輸送される。
ハロン
/はろん
フロンの一種であり、臭素とフッ素を両方とも含むハロゲン化炭化水素類のこと。主に消火剤として使われていたが、オゾン層を破壊する物質として特定ハロン(ハロン1211、ハロン1301、ハロン2402)がモントリオール議定書の付属書AでグループIIに分類され、我が国では1994年までに生産が全廃された。
ハロンの生産が全廃されても、既に国内には約17,000トンのハロンが防火対象物などに設置されており、それを適切に管理してみだりに排出するのを防止するため、我が国では消防環境ネットワーク(旧名:ハロンバンク推進協議会)を設立してハロンの回収などを確実に行うための仕組みを構築した。
半揮発性有機化合物(SVOC)
/はんきはつせいゆうきかごうぶつ(えすぶいおーしー)
”SVOC” は ”Semivolatile Organic Compound” の略で、世界保健機関(WHO)による広義のVOCの分類では、沸点が260℃以上400℃未満の有機化合物のこととなっている。クロルピリホス(沸点:290℃)やフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(沸点:390℃)などがSVOCに該当している。
判定フロー
/はんていふろー
判断の手順や判断基準を明確化したフロー図であり、ここでは、水質環境基準等の位置づけを判断するためのフロー図を意味している。
汎用エンジン
/はんようえんじん
多くの種類の機器に搭載することが可能なエンジンのこと。自動車や二輪車などの移動体は、一般に車種ごとに専用のエンジンが搭載されているが、細かな制御が要求されない機器では汎用エンジンが使われるのが一般的である。汎用エンジンの場合、機器に搭載せず単体で売買されることも多い。例えば、建設工事に用いるコンクリートミキサ、コンプレッサ、農作業に用いる刈払機、各種用途に用いる発電機などに搭載されたエンジンが該当する。
国は、化学物質排出把握管理促進法に基づいて、上記のうち、排出量の把握が可能な汎用エンジン搭載機器について、「汎用エンジン」として対象化学物質の届出外排出量の推計を行っている。
PRTR
/ぴーあーるてぃーあーる
PRTRとは"Pollutant Release and Transfer Register"の頭文字を取った略語であり、日本語では「化学物質排出移動量届出制度」などとも呼ばれる。PRTRは、多様な化学物質の環境への排出量を事業者が自ら把握し、その行政機関に報告されたデータを公表することにより、事業者の自主的な管理を促進するための仕組みまたはその制度のことである。1996(平成8)年2月に経済協力開発機構(OECD)が加盟各国に理事会勧告を出したのを受け、我が国でもPRTRの導入に向けた検討が始まり、平成11年7月の化学物質排出把握管理促進法の公布によって法制化された。日本のPRTR制度は、届出外排出量を幅広く推計・公表していることも大きな特長となっている。
PRTRデータ
/ぴーあーるてぃーあーるでーた
PRTR制度に基づいて公表されている化学物質の届出データ(排出量・移動量)や届出外排出量のこと。そのうち届出データについては、業種別や都道府県別などの集計データの他、個別事業所の(集計前の)データも含まれる。
PRTRパイロット事業
/ぴーあーるてぃーあーるぱいろっとじぎょう
我が国では化学物質排出把握管理促進法に基づき平成11年にPRTR制度が法制化されたが、その法律の施行前に国が一部地域で試行的に実施したPRTRのこと。平成9年度から平成13年度まで5回実施されたが、そのPRTRパイロット事業を通じて届出要件や届出事項などに関する課題を抽出し、PRTRの法制度の構築や法の運用に関する有用な情報が得られた。
PM2.5
/ぴーえむにーてんご
浮遊粒子状物質(SPM)のうち、粒径が2.5μm(0.0025mm)以下と特に小さい物質のことであり、微小粒子状物質とも呼ばれる。浮遊粒子状物質(SPM)の中でも特に人の健康への影響が大きいとされており、平成21年9月に大気汚染に係る環境基準が「1年平均値が15μg/m3以下であり、かつ、1日平均値が35μg/m3以下であること。」と設定された。
PM2.5はディーゼル車の排気ガスなどに含まれて排出されるほか、大気中での光化学反応等による二次生成もあるとされており、その排出や生成のメカニズムが複雑であるため、効果的な対策の見極めが難しくなっている。
北京の米国大使館がPM2.5の測定データの公表を始めたため、2013年には中国のPM2.5問題が突然クローズアップされるようになり、我が国への影響も懸念されている。
PCB
/ぴーしーびー
ポリ塩化ビフェニルのことであり、塩素の数や塩素が置換する位置が異なる209種類の化合物の一般的な名称である。熱安定性や絶縁性が高いことから過去には絶縁油等の幅広い用途で使用された実績があるが、毒性、生物蓄積性等が高いため、我が国では化学物質審査規制法(化審法)の第一種特定化学物質に指定され、製造や使用は禁止されている。
平成24年には、一部の有機顔料には非意図的に生成したPCBが含まれていることが判明し、国はその実態調査を行い、事業者への行政指導が行われた。
PFOS
/ぴーふぉす
⇒「パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)」を参照
PPR
/ぴーぴーあーる
⇒「汚染防止・対応小委員会」を参照
ppt
/ぴーぴーてぃー
”Parts Per Trillion” の略で、1兆分の1の数量であることを意味する。しばしば、濃度の単位(気体の体積比率)として使われる。濃度単位のppbと比べて1,000分の1の単位であるため、非常に濃度の低い物質の単位として使われる。
ppb
/ぴーぴーびー
”Parts Per Billion” の略で、10億分の1の数量であることを意味する。しばしば、濃度の単位(気体の体積比率)として使われる。 ”Parts Per Million” の略である ”ppm” は百万分の1の大きさであるため、その1,000分の1の大きさを表している。
東日本大震災
/ひがしにほんだいしんさい
平成23年3月11日に三陸沖を震源として発生した大地震のことを気象庁が「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」と命名したが、その地震によって引き起こされた災害や、それに連動した原子力発電所事故による災害を総称する名称のこと。この名称は平成23年4月1日に閣議決定された。
この東日本大震災は阪神・淡路大震災と比較されることが多いが、津波による被害が大きかったことが大きな特徴であり、人的被害の他、住宅やライフライン、交通網などに甚大な被害を与え、経済活動にも長期間に亘る影響が続いている。
飛行場
/ひこうじょう
航空機の離陸又は着陸の用に供するため設けられる施設(航空法第2条第6項に基づく。)であり、一般に滑走路や誘導路、管制塔などから構成されている。飛行場に類似するものとして「空港」があるが、空港とは空港法によって「公共の用に供する飛行場」(第2条)として定義されており、例えば、もっぱら民間団体が専用するような飛行場(例:ホンダエアポート)は「空港」には分類されない。また、空港法附則第二条に規定される共用空港(例:小松飛行場)も「空港」に分類されるが、共用空港には空港法の本則の規定は適用されない。
PRTRの届出外排出量の推計では、航空機の離発着に伴う排出量を推計しているが、その着陸回数は空港管理状況調書(国土交通省)のデータに基づいている。その空港管理状況調書の対象となっているのは拠点空港(会社管理空港/国管理空港/特定地方管理空港)、地方管理空港、共用空港、その他の空港である。これらの空港の中には、調布飛行場のように名称に「飛行場」が含まれているものがあるが、これらも空港法に基づく空港に該当している。
非常用発電機
/ひじょうようはつでんき
常用電源が停電した際に必要な電源を確保する目的で設置される発電機のこと。非常用発電機は、保安設備(一般照明、医療機器、コンピュータ等)のみを対象とした保安用と防災設備(消防設備、建築設備)を対象とした防災用の2種類がある(保安用と防災用を兼用する非常用発電機は、防災用に分類される)。防災用の非常用発電機は、電気事業法では「非常用予備発電設備」として、消防法では「非常用電源」として、建築基準法では「予備電源」として設置される。
非対象業種
/ひたいしょうぎょうしゅ
化学物質排出把握管理促進法に基づくPRTR制度は、製造業等の対象業種を営む事業者に限って届出義務があるため、その他の業種(例:農業や建設業)は従業員規模や取扱量等の如何によらず届出義務がない。そのような業種のことを非対象業種と呼び、そのような事業者からの排出量はすべて届出外排出量として推計すべき対象となる。 非対象業種による化学物質の排出としては、「農地における農薬散布」や「建築物の塗装」等に伴う排出が該当する。
非点源排出量
/ひてんげんはいしゅつりょう
工場などの固定発生源以外の小規模で分散した発生源からの排出量のことで、具体的には家庭や移動体、中小零細企業の事業所などが該当する。「非点源」とは英語の"Non-Point Source"を直訳したものである。
非点源排出量は届出外排出量とほぼ同義だが、我が国のPRTR制度では、届出外排出量のうち「すそ切り以下排出量」を除いたものを非点源排出量と呼ぶ決まりとなっている。
人健康
/ひとけんこう
化学物質が影響を与える対象としての「人の健康」のこと。「ヒト健康」と表記される場合もある。人健康への影響の具体的な項目には、発がん性、変異原性、生殖毒性等がある。化学物質のリスク評価において、水生生物とともに影響を評価されることが多い。
飛灰
/ひばい
一般廃棄物処理施設や産業廃棄物処理施設等の焼却炉で廃棄物を焼却処理した際、排ガスから回収されるばいじんのこと。焼却炉の底で回収される「焼却灰(主灰)」とは区別される。 一般に飛灰は焼却灰よりもダイオキシン類や重金属を多く含むため、バグフィルタなどで捕集された後、セメント固化や薬剤処理などの溶出防止の処理を行ってから灰ピットに送られる。
標準組成
/ひょうじゅんそせい
塗料や接着剤等の化学品について、製品の分類ごとに設定した代表的な組成(物質ごとの含有率)のこと。 塗料や接着剤などは製品の種類が極めて多いため、個々の製品の含有率を網羅的に把握して国全体の排出量を推計するのは困難なため、 このような標準組成が作られ、 排出量推計に活用されている。 我が国で PRTR の導入が検討されていた初期段階で は、SDS(MSDS)の整備が十分ではなかったため、事業者による排出量の把握を支援するために標準組成が使われたこともある。
ビル用水法
/びるようすいほう
⇒「建築物用地下水の採取の規制に関する法律」を参照
VOC
/ぶいおーしー
⇒「揮発性有機化合物(VOC)」を参照
風力発電施設
/ふうりょくはつでんしせつ
1基または複数の風車からなる発電施設のこと。他の発電施設に比べ、温室効果ガスの排出量を低減できる、他の再生可能エネルギーと比べ発電コストが低い、冷却水を必要としないため立地確保が容易であるなどの長所がある。また、小規模分散型の発電施設であるため、災害時などの有事での稼働率を高くすることができ、地震や津波にも強い(2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により運転が停止した風車は一基もなかった)。
一方、短所として、風速の変動に伴う出力電圧の変動、近隣住居への騒音・低周波音の影響、鳥が風車へ衝突するバードストライクやブレードの回転により影が生じるシャドーフリッカーなどの問題がある。 また、国内では、不適切な風況下に設置したために予想通りの電力量が得られなかったケースや、複数の風車の間隔を十分に確保しなかったためにブレードが破損したケースも少なくない。
不確実性
/ふかくじつせい
真の値と観測データや推定値との差を「誤差」と呼ぶのに対し、真の値が不明な場合に、その真の値が存在する範囲の広さを確率的に表す指標のこと。
例えば、得られたデータにばらつきがあるとき、それらのデータに基づいて推計された排出量も一定のばらつきがある。その排出量の真の値が含まれる範囲を95%信頼区間として表すとき、その中央値と信頼区間の幅との比率によって不確実性を表すことができる。
不確実性評価
/ふかくじつせいひょうか
数学的な手法を用いて不確実性の程度を定量的に評価すること。
化学物質の排出量推計に関連した不確実性評価であれば、推計に使う個々のパラメータ(例:排出係数)ごとに不確実性を評価し、それらを使って算出される排出量も不確実性が評価される。不確実性評価の結果は、算出された排出量等の値とその95%信頼区間の幅との比率などとして示される。
測定データに基づき平均値を算出する場合、一般に得られたデータ数が多く、そのばらつきの程度が小さいほど平均値の不確実性が小さくなる。
副生
/ふくせい
化学物質の合成反応の目的生成物質以外の物質が生成すること。顔料では、原料としてクロロベンジジンやジアゾニウム塩を使用することがあり、顔料を合成する段階でポリ塩化ビフェニルやヘキサクロロベンゼンなどの化審法の特定第一種化学物質を副生してしまうことが問題となった。
物質代替
/ぶっしつだいたい
ある化学物質の有害性などの悪影響を避けるため、同様の機能を持つ別の化学物質に変更すること。塩素系洗浄剤から炭化水素系洗浄剤への変更や、鉛フリー半田への変更などが代表的な物質代替である。
新たに使用する化学物質については、有害性等の科学的知見が少ない化学物質である場合が少なからずあり、限られた情報だけで物質代替が進められ、必ずしも合理的な物質代替が行われていない場合があるとの指摘がある。したがって、化管法見直しの一環として出された中間答申(平成19年8月)においても、物質代替が適切に行われるよう、国が適切な情報提供に努めることが必要とされた。
浮遊粒子状物質 (SPM)
/ふゆうりゅうしじょうぶっしつ (えすぴーえむ)
粒子状物質(PM)のうち、粒径が小さいため大気中に浮遊している大気汚染物質のこと。通常は英語のSuspended Particulate Matterの頭文字を使って"SPM"と呼ばれる。我が国では粒径が10μm(0.01mm)以下のものをSPMと定義し、その環境基準値を0.10mg/m3以下(1時間値の1日平均値)などと定めている。SPMには、工場等から排出される「ばいじん」やディーゼル自動車等から排出されるディーゼル排気微粒子(DEP)などが含まれており、このうちDEPの対策として大気汚染防止法や自動車NOx・PM法に基づきPMの排出基準が定められた。
ブラックカーボン(BC)
/ぶらっくかーぼん(びーしー)
炭化水素を主成分とする化石燃料の不完全燃焼や野焼き等によって生じる黒色の微粒子であり、「黒色炭素」とも呼ばれる。太陽光を効率よく吸収するため、温室効果ガスの一種でもある。元素状炭素(EC)とほぼ同じ意味で使われる。
フロン
/ふろん
フッ素を含むハロゲン化炭化水素類のことであり、ハロンもそのうちの一部である。
そのうち特定フロン(CFC)はオゾン層破壊物質としてモントリオール議定書によって製造等が禁止され、代替フロン(HCFCやHFC)への代替が進められた。しかし、代替フロンについても地球温暖化への影響が懸念され、ハイドロフルオロカーボン(HFC)は京都議定書における排出削減の対象とされた。また、代替フロンのうちHCFCは2020年までに先進国での全廃が決定されており、さらなる代替物質の開発が求められている。
分解性
/ぶんかいせい
化学物質等の大気、水中、土壌等における分解のされやすさのこと。環境中に排出された化学物質は、光分解、加水分解、生分解等の過程を経て分解され、より小さな構造の物質に分解されることが多い。そのような分解が起こると、元の化学物質の有害性による悪影響が一般に解消されるが、分解されないまま環境中に存在する化学物質は長期間にわたってその影響が残るため、「難分解性」の化学物質として扱われ、化審法等の規制対象になることが多い。
ベース物質
/べーすぶっしつ
PRTRの「すそ切り以下排出量」の推計で定義したもので、各排出源に関係する製品の全国出荷量と平均含有率等に基づいて排出量が推計される物質のこと。一方、各排出源で平均含有率等のデータが直接得られない物質は、化学物質を取り扱う事業者へのアンケート調査によって得られる化学物質ごとの排出量の比率を使って追加的に推計しているため、そのような物質を追加物質という。
ベーパーリターン
/べーぱーりたーん
⇒「蒸気回収装置」を参照
平均含有率
/へいきんがんゆうりつ
製品などの混合物に含まれる化学物質ごとの含有率の平均値のこと。「標準組成」と表現する場合も基本的に同義である。製品等の種類が同じでも、個々の製品ごとに含有率が異なるのが一般的であるため、それらを何らかの方法で平均し、その製品種類としての代表的な含有率として設定したもの。例えば塗料の場合、「建物用のアクリル樹脂系塗料(常温乾燥型)」といった塗料種類に対応した平均含有率(標準組成)が設定されている。PRTRの届出外排出量の推計においては、廃棄物についても「廃プラスチック類」等の廃棄物種類ごとの平均含有率という概念を導入し、廃棄物処理に伴う排出量を推計することが試みられている。
平均値
/へいきんち
複数のデータが得られた場合、それらのデータが属するグループの「代表的な値」として算出される値のこと。その「平均」としては、単純平均(算術平均)や幾何平均、加重平均などが定義され、目的に応じて使い分けられている(「ばらつきの程度」に応じて使い分けるのは正しくなく、その平均値をどう使うかという「目的」に応じて使い分けるのが正しい)。
平均取扱量
/へいきんとりあつかいりょう
複数の取扱量データが得られたとき、それらを何らかの方法で平均した値のこと。サンプリング調査で複数の事業者(事業所)から回答された取扱量データを単純平均し、ある業種や化学物質の「平均的な取扱量」として算出する場合などが該当する。
サンプリング調査に基づく平均取扱量を設定する場合、得られたデータ数が少ないときや、取扱量のばらつきが大きいときには、算出される平均取扱量の信頼性が低くなるため、その平均取扱量を前提として排出量などを推計する場合は、その結果の信頼性も低くなると考えられる。
平均排出率
/へいきんはいしゅつりつ
事業活動などにおいて、化学物質の使用量(kg)や施設への投入量(kg)に対し、環境へ排出される数量(kg)の占める割合のことを排出率と呼び、それを平均した値を平均排出率と呼ぶ。
その使用等の過程で当該物質が新たに生成されることがない限り、平均排出率が100%を超えることは原理的にないため、 物質収支の観点からデータの信頼性が検証しやすくなると共に、当該工程の効率性の指標にもなり得る。
ヘキサクロロベンゼン
/へきさくろろべんぜん
ヘキサブロモシクロドデカン
/へきさぶろもしくろどでかん
臭素系の化学物質であり、主に難燃剤として用いられてきた。我が国では建材用XPS・EPS、防炎カーテン、自動車用シート等の燃えやすい素材を効率よく難燃処理できる物質として普及したが、近年、高蓄積性・難分解性が指摘されたことから平成25年(2013年)4月のPOPs条約締約国会合(COP6)において附属書A物質(廃絶)への追加掲載が採択され(効力発生は平成26年11月)、我が国でも化審法の第一種特定化学物質に指定された(政令改正:平成26年5月1日)。
ベストミックス
/べすとみっくす
VOC対策のあり方について、平成16年の中央環境審議会による意見具申として盛り込まれた考え方であり、法規制(=確実な排出削減が保証されるもの)と事業者による自主的取組(=費用対効果の高い対策が期待されるもの)を最適に組み合わせた対策の枠組みとして提唱された。 このうち、 自主的取組は有害大気汚染物質の対策として高い効果を上げた実績があり、VOC対策においても自主的取組が中心的なものとして位置づけられ、その進捗状況を把握するため、年度ごとにVOCの排出インベントリが作成されている。
ペルフルオロ(オクタン−1−スルホン酸)(PFOS)
/ぺるふるおろおくたんいちするほんさん
⇒「パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)」を参照
変異原性
/へんいげんせい
細胞または生物の集団における突然変異(細胞内の遺伝物質の量又は構造の恒久的変化)の発生をもたらす性質のこと。サルモネラ菌を用いるエームス(Ames)試験や、哺乳類の培養細胞を用いる染色体異常試験、げっ歯類を用いた小核試験などの評価方法があり、通常は数種類の試験を組み合わせて総合的に評価する。これらの変異原性試験は、発がん性を評価するためのスクリーニングとしても有効である。
偏在性
/へんざいせい
化学物質等の使用や排出が特定の場所に集中している程度のこと。ごく一部の事業者だけが取り扱う特殊な物質は、環境中への排出ポイントも限られた地点しか存在しないと考えられるため、そのような物質については「偏在性が高い」と表現する。
全国合計の排出量が同程度の物質が複数あったとき、偏在性が高い物質と偏在性が低い(=排出ポイントが分散している)物質のどちらを優先的に取り扱うかは、その対策等の目的に応じて判断が分かれる。
芳香族炭化水素
/ほうこうぞくたんかすいそ
分子構造が炭素(C)と水素(H)だけからなる炭化水素のうち、分子構造の中にベンゼン環を一つ以上含む物質のこと。ベンゼン環が縮合した分子構造を持つものは、多環芳香族炭化水素(PAH)と呼ばれ、一般に揮発性が低く、PM2.5の構成要素の一つに位置づけられる。
放流水
/ほうりゅうすい
法令取扱分類
/ほうれいとりあつかいぶんるい
大気汚染防止法に基づく揮発性有機化合物(VOC)対策において、規制対象となる施設類型や施設規模等との関係に着目し、VOC排出量を把握(推計)する対象を分類したときの区分のこと。具体的には「(1)規制施設」、「(2)すそ切り以下施設」、「(3)対象外施設」、「(4)屋外等」の4区分のこと。これは法令に基づく用語ではなく、VOC排出インベントリの作成にあたって、推計対象を分類するために便宜的に表現したものである。
母集団
/ぼしゅうだん
統計学では「情報を把握すべき対象の全体」という意味であり、そこから抽出された一部を「標本」と呼ぶのに対比して使われる。その統計学における「母集団」と「標本」との関係に類似するものとして(統計学のアナロジーとして)、選定すべき化学物質等の候補となるものの全体像を「母集団」と呼ぶことがある。
化学物質は非常に多岐にわたっており、数も多いため、特定の物質を抽出する際には、目的に応じて検討対象とする化学物質のグループをあらかじめ選定しておき、それらをまとめて母集団とすることがある。
捕捉率
/ほそくりつ
実態調査などを行った場合、すべての対象からデータが得られるとは限らないため、「本来の把握対象」に対して、「実際にデータが得られた対象」の割合のことを「捕捉率」という。全数調査ではなく抽出調査とすることでも捕捉率は100%より小さくなるが、調査対象範囲の中でもデータが取得できないこと(例:アンケート調査における無回答)もあるため、その場合は捕捉率がさらに低くなる。
一般に、捕捉率が低いデータを使うと、それに基づく推計結果の不確実性が大きくなる。
ホットスタート
/ほっとすたーと
排出ガス除去触媒が暖まった状態で自動車等のエンジンが始動され走行すること。
国は、化学物質排出把握管理促進法に基づくPRTR制度において、自動車と二輪車の排気ガスによる対象化学物質の排出として、ホットスタートによる化学物質排出量を「コールドスタート時の増分」とは区別して推計し、届出外排出量として公表している。
自動車排出ガス規制値は、これまでホットスタートを前提とした10・15モードなどが使われてきたが、コールドスタートの寄与を考慮に入れたJC08モードなどに切り替わってきた。
ホットソークロス
/ほっとそーくろす
ガソリン車において、エンジン停止後1時間以内に吸気管に付着したガソリンが発生する蒸発ガス。HSL(Hot Soak Loss)と略称される。
POPs条約
/ぽっぷすじょうやく
正式名称は、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」。残留性有機汚染化学物質(Persistent Organic Pollutants;略称POPs)とは、難分解性、高蓄積性、長距離移動性を有する人及び生態系に対して有害な化学物質のことである。POPsのうち大気中で蒸発しやすものは、蒸発と雨水による降下を繰り返し世界中へ拡散する(バッタ効果)。また、海洋中では、魚介類への蓄積やイルカ等の大型魚類の移動により汚染が拡大することがある。
POPsによる地球規模の汚染への対策は国際的な協調が不可欠であったため、12種類のPOPsについて製造・使用等を原則禁止する条約として、POPs条約が2001年5月にストックホルムで成立した(2004年5月 発効)。
なお、2009年5月に開催されたPOPs条約の第4回締約国会議(COP4)では、撥水剤(はっすいざい)や泡消火剤に使用されているペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩や農薬のクロルデコン等の9種12物質が新たに同条約の対象(附属書A〜Cに追加掲載)となり、その後さらに、第8回締約国会議(COP8)までにデカブロモジフェニルエーテル(デカBDE)や短鎖塩素化パラフィン(SCCP)等が随時追加されている。
ボトムアップ式
/ぼとむあっぷしき
ボトムアップとは「下から上に」という意味で、意思決定の手順などを表す場合に使われる用語であるが、その手順へのアナロジーとして、PRTRでは「人口1人当たりの消費量」や「1事業所当たり取扱量」といった平均値をサンプリング調査に基づいて設定し、拡大推計によって全体の排出量などを推計する手法のことをボトムアップ式と呼ぶ。別の推計方法を表す「トップダウン式」と対比して使われる。
サンプリング調査によるデータを基礎としており、そのデータ数やばらつきによって平均値の信頼性に大きな差が生じるが、トップダウン式の推計方法に比べると推計結果の信頼性が低くなることが多いと考えられている。
本川
/ほんせん
同一水系内の河川のうちで河口を有する最も代表的な河川のこと。「本流」と呼ぶ場合も同義である。一般的には同一水系内の河川のうちで最も水量が多く、最も河川長が長い場合が多い。本川以外の河川は支川などと呼ばれる。
例えば、利根川水系の本川は利根川であり、その支川には鬼怒川、渡良瀬川等がある。