RVP
/あーるぶいぴー
⇒「リード蒸気圧」を参照
硫黄酸化物 (SOx)
/いおうさんかぶつ (そっくす)
窒素酸化物(NOx)と並ぶ大気汚染物質の一つで、大気汚染防止法によってばい煙発生施設等からの排出が規制されている。硫黄酸化物(SOx)の場合、燃料中に含まれる硫黄分が排出濃度に大きく影響するため、排出規制の他に重油等の燃料使用基準も定められている。
一酸化炭素(CO)
/いっさんかたんそ
化学式"CO"で表される無色の気体。金属の精錬や化学物質の合成原料として使用されるほか、石炭や木炭の不完全燃焼や自動車燃料の燃焼等による発生もある。急性毒性が強く、吸入により頭痛やめまい、最悪の場合意識を失う(火災時の一酸化炭素中毒の原因物質である)。 なお、1969年12月の厚生省生活環境審議会答申に基づき、CO血球素(COHb)の生成による組織への酸素運搬機能の阻害等を根拠として、現行の大気汚染に係る環境基準が定められた。
参考 : 環境の基準-その科学的背景- (日本化学会編)
A分類物質
/えーぶんるいぶっしつ
平成7年9月20日付けの中央環境審議会に対する諮問「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(諮問)」に対する平成8年の中間答申で示された有害大気汚染物質の分類の一つ(その全体を含むものがA分類物質)であり、「大気環境を経由して人の健康に有害な影響を及ぼす疑いがある物質であって、我が国において現に検出されているか、又は検出される可能性のある物質群」のこと。同答申では、効率的に排出抑制対策を講じるために、健康リスクの程度に応じて物質を3種類(A,B,C)に分類して対策を行うことが適当とされた。3種類の物質群は、「A分類>B分類>C分類」という包含関係にあり、それらの健康リスクの程度は「C分類>B分類>A分類」である。A分類物質については基礎的な情報(有害性、大気環境濃度等)の収集やデータベースの整備に努める必要があるとされており、第二次答申(平成8年)では234物質、第九次答申(平成22年)では248物質がA分類物質として選定されている。
エアロゾル
/えあろぞる
大気中に浮遊している微小な粒子(液体や固体)のこと。粒径は0.001μm〜100μm程度の粒子があるとされており、PM2.5やSPMはそのエアロゾルの一部であり、それぞれ粒径によって分類されたものである(PM2.5であれば粒径がおおむね2.5μm以下)。
越境大気汚染
/えっきょうたいきおせん
国境等の境界線を越えて、大気汚染物質や前駆物質が輸送されることで生じる大気汚染現象のこと。九州地方を中心に西日本では相対的に越境大気汚染の影響が強く、関東地方や北日本では国内発生源の影響が強いとされるが、北日本でもシベリアの森林火災の影響等でPM2.5等が高濃度になることがある。
EDMS
/えどむす
米国連邦航空局(FAA)によって1980年代の半ばに開発された空港関連排ガス専用のシミュレーションモデルのことで、米国環境保護庁(EPA)推奨モデルの一つ。EDMSとは"Emissions and Dispersion Modeling System"の略である(Ver5.1.4_2013年4月リリース) 。 滑走路や空港ターミナル、 道路等のレイアウトを地図や航空写真を基にして詳細に設定することが可能である。 また、航空機以外にも、空港内作業車、燃焼施設(ボイラー棟やゴミ処理場等)、自動車等の発生源を設定することが可能であり、より実環境に即した条件で空港全体の影響を評価することができる。
NMVOC
/えぬえむぶいおーしー
非メタン揮発性有機化合物(Non-Methane Volatile Organic Compounds)の略称であり、揮発性有機化合物(VOC)のうちメタン以外の物質を意味する。THC(全炭化水素)とは異なり、アルデヒド類などの含酸素化合物やアミン類などの含窒素化合物なども含む。
NMVOCのうち、含酸素化合物、含窒素化合物を除いた非メタン炭化水素(Non-Methane hydrocarbons)については、光化学オキシダントの生成防止のための大気濃度の指針値が設けられている。また、NMVOCから光化学的に活性の低い数種類のフロン類を除いた物質は、平成16年5月の大気汚染防止法の改正によって、塗装、印刷施設等からの排出濃度が規制されている。
NO2
/えぬおーつー
⇒「二酸化窒素」を参照
沿道
/えんどう
有害大気汚染物質に係る大気汚染の常時監視の測定地点のうち、交通量の多い道路から近い位置に設置された測定地点の属性のこと。「道路に沿ったところ」という意味で日常的に広く使われる用語であるが、大気汚染防止法に基づく常時監視の事務処理基準では、「沿道における測定地点」とは、「交差点、道路及び道路端付近において、自動車から排出される有害大気汚染物質による大気汚染状況が効率的に監視できるよう、固定発生源からの有害大気汚染物質の排出の直接の影響を受けにくいと考えられる地点」と定義される。
なお、環境法上の類似の用語として騒音規制法に基づく「道路に面する地域」があり、通常は幹線交通を担う道路から50m以内の地域のことを指す。
O3
/おーすりー
⇒「オゾン」を参照
オキシダント生成能
/おきしだんとせいせいのう
揮発性有機化合物(VOC)が光化学オキシダントを生成する能力をいう。VOCは物質ごとに化学的な反応性が異なり、また、気象条件や他の物質との組み合わせにより、オキシダントを生成する量も異なると考えられることから、一般には、代表的な条件を設定した上で、数値シミュレーションによる計算を行って、オキシダント生成能を評価する。
オゾン(O3)
/おぞん(おーすりー)
3個の酸素原子からなる薄青色のガス状物質。化学式はO3。同じオゾンであっても存在する高度によって異なる名称で呼ばれており、地表付近〜約10kmまでの対流圏に存在するオゾンは「対流圏オゾン」、約10-50kmの成層圏に存在するオゾンは「成層圏オゾン」と呼ばれている。成層圏オゾンは生体にとって有害な紫外線を吸収する作用を持つが、対流圏オゾンは光化学オキシダントの主成分であり、人体や植物に悪影響を与える。
対流圏オゾンは光化学反応により生成される二次生成物質であり、日差しの強い夏季の日中に濃度が高くなる傾向がある。
環境基準
/かんきょうきじゅん
人の健康の保護などを目的に、大気汚染や水質汚濁等に関連して「維持されることが望ましい基準」として環境基本法に基づき指定されているもの。大気汚染や水質汚濁の場合、大気や水に含まれる汚染物質の濃度(ppmやmg/Lなど)として、環境庁告示等で基準値が指定されている。そのうち、水質汚濁に係る環境基準は、さらに「人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)」と「生活環境の保全に係る環境基準(生活環境項目)」に分けて項目が指定されている。
>>> 環境基準について(環境省HP)
感度レジーム
/かんどれじーむ
対流圏オゾンの生成量(生成速度)と、その前駆物質である揮発性有機化合物や窒素酸化物の排出量は単純な比例関係にならないことが知られており、その関係性は(オゾンの)感度レジームで説明される。感度レジームは主に「VOC律速(VOC-limited)」と「NOx律速(NOx-limited)」に大別される。大気の状態がVOC律速の場合はオゾン濃度の低下に対してVOCの排出量削減が効果的であり、一方でNOx律速の場合はNOxの排出量削減が効果的となる。感度レジームは前駆物質の濃度比(VOC/NOx)によりおおよそ決まることが知られており、一般にNOx濃度の高い都市部ではVOC律速、VOC濃度が高い郊外ではNOx律速となる傾向がある。
基準値
/きじゅんち
環境基準や排出基準などは遵守すべき値として示されるが、その「値」のことを意味する。単に「環境基準」と呼ばれるときも、項目ごとの遵守すべき値を含む意味を持つが、特に「値」を強調する場合に「基準値」と呼ばれる。
揮発性有機化合物 (VOC)
/きはつせいゆうきかごうぶつ (ぶいおーしー)
"VOC"は"Volatile Organic Compound"の略であり、揮発性の高い有機化合物の総称である。我が国の大気汚染防止法では「大気中に排出され、又は飛散した時に気体である有機化合物」と包括的な定義がなされているが、世界保健機関(WHO)では沸点の範囲が50℃から260℃の範囲の有機化合物に限ってVOCと定義している(物質ごとの揮発性の程度に応じて分類している)。光化学オキシダントの前駆物質の一つであり、溶剤や燃料等の蒸発のほか、植物などからも排出される。大気汚染防止法に基づく排出規制等の対象であるが、大気環境の分野では(労働環境の分野と異なり)人の健康への直接的な悪影響は考慮されておらず、大気汚染物質(光化学オキシダント等)の前駆物質の一つに位置付けられている。
同様の意味で「炭化水素類」という表現が使われることがあるが、炭化水素類は厳密には炭素(C)と水素(H)以外の元素を含む化合物(例:アルデヒド類)は含まないため、VOCとは意味が異なる。
キャニスタ
/きゃにすた
ガソリン自動車の燃料系統に蒸発ガスの発生を防止するために装着されている活性炭等が封入された吸着装置を指す。駐車中に蒸発したガスはキャニスタに吸着されるが、走行中に吸気マニフォルド(多気筒エンジンに空気を供給するための枝別れになっている配管)が負圧となって吸着された蒸発ガスを空気とともに吸気マニフォルドに送り、キャニスタの吸着能を回復する。
クリーニングソルベント
/くりーにんぐそるべんと
工業ガソリン5号の通称であり、ドライクリーニング等に用いられる石油系混合溶剤の一種である。JIS K 2201により、初留温度150℃以上などと規定されており、工業ガソリンの中では比較的高沸点の成分から構成されている。
光化学オキシダント
/こうかがくおきしだんと
環境基準が設定されている代表的な大気汚染物質であり、VOCやNOxなどを前駆物質として、大気中で紫外線による光化学反応によって二次生成されると考えられている(排出ガスなどに含まれて直接的に排出されるものは想定されていない)。光化学スモッグの原因となり、その1時間値が一定レベル以上になると、都道府県による注意報や警報、重大緊急警報が発令される。しばしば「Ox」と表され、その多くをオゾン(O3)が占めているが、アルデヒド(R-CHO)やパーオキシアセチルナイトレート(PAN:R-CO3NO2)などを含む酸化性物質の総称がオキシダントである。
光化学スモッグ
/こうかがくすもっぐ
光化学オキシダント等の濃度が高くなり、白くもやがかかった状態(スモッグ状)になることを光化学スモッグという。
光化学オキシダントの濃度が光化学スモッグの指標として使われ、その濃度に応じて、光化学スモッグ注意報、警報等の発令基準が定められており、都道府県より発令される。
光化学反応
/こうかがくはんのう
ある物質に光のエネルギーが加えられて起こる化学反応のこと。分子が光エネルギーを受け取って励起された状態となり、それがさまざまな化学反応を引き起こすことがある。大気中で発生する励起反応とほぼ同義である。
固定発生源
/こていはっせいげん
発生源のうち、自動車や船舶等の移動発生源を除く発生源のことであり、火力発電所や工場などの燃焼発生源が代表的なものである。移動発生源(mobile source)に対比して使われる表現であり、その発生源の場所が不変である(=固定されている)ことから固定発生源(stationary source)と呼ばれる。
固定発生源周辺
/こていはっせいげんしゅうへん
有害大気汚染物質に係る大気汚染の常時監視の測定地点のうち、固定発生源から近い位置に設置された測定地点の属性のこと。大気汚染防止法に基づく常時監視の事務処理基準では、「固定発生源周辺における測定地点」とは、「移動発生源からの有害大気汚染物質の排出の直接の影響を受けにくいと考えられる地点」と定義される。
ゴム揮発油
/ごむきはつゆ
工業用ガソリン2号の通称であり、主にゴム溶解や塗料の希釈に用いられる石油系混合溶剤の一種である。JIS K 2201により、初溜温度80℃以上、終点160℃以下と規定されている。
自動車排出ガス測定局
/じどうしゃはいしゅつがすそくていきょく
大気汚染防止法に基づいて都道府県等が設置する大気汚染常時監視測定局のうち、自動車排出ガスによる大気の汚染状況を把握するために設置された測定局のこと。その設置にあたっては、人が常時生活し、活動している場所で、自動車排出ガスの影響が最も強く現れる道路端又はこれにできるだけ近接した場所にすることが望ましいとされている。
蒸気回収装置(ベーパーリターン)
/じょうきかいしゅうそうち(べーぱーりたーん)
タンクローリーから給油所の地下タンクへの燃料補充時(受入時)、及び自動車の燃料タンクへの燃料給油時(給油時)に発生する蒸気(ベーパー)を回収する装置のこと。受入時の蒸気回収装置は発生した蒸気をタンクローリーに回収する装置が一般的であり、一部の自治体では条例により設置を義務付けている。 また、給油時の蒸気回収装置には、発生した蒸気をそのまま地下タンクに回収する装置(気体回収装置)と、蒸気を液化して回収する装置(液化回収装置)がある。
常時監視
/じょうじかんし
水質汚濁や大気汚染、自動車騒音の状態を継続的に監視することで、水質汚濁防止法や大気汚染防止法で都道府県知事に義務が課せられている。
水質汚濁に係る常時監視の場合、水質汚濁防止法第16条に基づいて都道府県が毎年作成する測定計画に基づき、公共用水域と地下水について、それぞれ水質環境基準(健康項目・生活環境項目)を中心に水質測定が行われている。
水質環境基準は、ほぼ網羅的な水質調査が実施されており、全国で毎年4千程度の測定地点が対象となっているが、要監視項目は都道府県ごとに一部の項目に限って水質調査が実施され、測定地点は全国で数百ヶ所程度となっている。これらは基本的に月1回の頻度で実施されている。
大気汚染の常時監視は、 例えば二酸化窒素(NO2)では全国の 1,700あまりの測定局 ( うち、一般環境大気測定局が1,300局あまり、自動車排出ガス測定局が400局あまり)で1時間ごとの濃度が自動計測されている。
さらに、自動車騒音では、都道府県知事が原則5年で評価区間を一巡するローテーション方式による常時監視を行い公表することが騒音規制法第18条、第25条で規定されている。騒音の常時監視では、沿道の敷地境界における自動車騒音を実測するだけではなく、その結果に基づき道路に面する地域内の住居等における等価騒音レベルの予測も行う。平成24年の自動車騒音に係る常時監視は、6,645千戸の住居等を対象に実施され、国全体での環境基準の達成率は92.6%であった。
石油系混合溶剤
/せきゆけいこんごうようざい
燃料用ガソリンと同様、石油を分留して得られる溶剤であり、塗料、印刷インキ、工業用洗浄剤等に幅広く用いられる。分留によって主成分が決まり、その主成分によってミネラルスピリットやゴム揮発油、クリーニングソルベントなど、一般的な分類名が与えられているものがある。主成分について脂肪族(側鎖の有無)/芳香族等の区別や中心的な炭素数などが明らかになっているケースもあるが、成分の詳細は明らかにされていないことが多く、一般にオキシダント生成能も不明である。
前駆物質
/ぜんくぶっしつ
大気等の自然界において、ある化学物質Aが化学物質Bの化学反応によって生成される場合に、BはAの前駆物質と呼ばれる。例えば、光化学スモッグの原因である光化学オキシダントの主成分は対流圏オゾンであるが、このオゾンは大気中での光化学反応により、揮発性有機化合物と窒素酸化物から生成される。つまり、揮発性有機化合物と窒素酸化物は対流圏オゾンの前駆物質と言える。
ソルベントナフサ
/そるべんとなふさ
塗料用の溶剤として使用されている芳香族を主成分とする石油系混合溶剤であり、VOC排出インベントリにおける呼称である。
ダイアーナルブリージングロス
/だいあーなるぶりーじんぐろす
ガソリン車において、駐車中に気温の変化等により燃料タンクで蒸発したガソリン蒸気が破過したキャニスタから大気へ放出されることにより発生する蒸発ガス。DBL(Diurnal Breathing Loss)と略称される。
大気汚染常時監視測定局
/たいきおせんじょうじかんしそくていきょく
⇒「常時監視」を参照
大気汚染物質放出規制海域 (ECA)
/たいきおせんぶっしつほうしゅつきせいかいいき
Emission Control Areaの略。マルポール条約附属書VIで定められ、一般の海域よりも厳しい規制(NOx排出、燃料中硫黄分濃度の上限値)が課せられる海域を示す。現時点で大気汚染放出規制海域として指定されているのは、バルト海、北海(以上硫黄成分濃度規制のみ)、北米海域及び米国領カリブ海域(以上硫黄成分濃度規制及びNOx排出規制)である。
大気汚染防止法
/たいきおせんぼうしほう
大気汚染を防止して人の健康の保護などを促進するための法律で、工場・事業場からの窒素酸化物等の排出規制や自動車排気ガスの許容限度などが規定されている。平成8年度の改正で有害大気汚染物質に係る取組が追加され、さらに平成16年の改正では揮発性有機化合物(VOC)の排出規制などが追加された。また、平成22年の改正では、ばい煙の測定結果の改ざん等に対する罰則などが新設された。都道府県による大気の汚染の状況の常時監視も、この大気汚染防止法に基づいて実施されている。
大気汚染防止法に基づく常時監視の事務処理基準
(※大気汚染防止法における事務処理基準について)
/たいきおせんぼうしほうにもとづくじょうじかんしのじむしょりきじゅん
正式名称は「大気汚染防止法第22条の規定に基づく大気の汚染の状況の常時監視に関する事務の処理基準」である。地方自治法第245条の9に基づき、平成13年に環境省環境管理局長より各都道府県知事及び政令市長へ通達された。地方公共団体が大気汚染状況の常時監視に関する法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準であり、測定局の数や配置、測定方法等について定めている。
窒素酸化物 (NOx)
/ちっそさんかぶつ (のっくす)
空気中や燃料中の窒素成分がエンジンやボイラー等での燃焼によって酸化され、非意図的に生成する大気汚染物質のことであり、主として一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)から成る。このような窒素酸化物(NOx)は、健康影響をもたらすばかりでなく、光化学スモッグの原因物質の一つであるため、大気汚染防止法等により、ばい煙発生施設や自動車等からの排出が規制されている。
自動車等の排気ガスとして排出する段階では一酸化窒素(NO)であっても、大気環境中で酸化され二酸化窒素(NO2)に変化するものが多い。したがって、自動車排ガスなどの排出基準は窒素酸化物(NOx)として定められているが、環境基準は二酸化窒素(NO2)として基準値が定められている。
注意喚起のための暫定的な指針となる値
/ちゅういかんきのためのざんていてきなししんとなるあたい
微小粒子状物質(PM2.5)の大気環境中濃度に関する値の一つであり、現時点での疫学的な知見を考慮して、健康影響が出現する可能性が高くなると予測される濃度水準を定めており、法令に基づかない注意喚起のための暫定的な値のこと。PM2.5の場合、日平均値が70μg/m3を超える可能性がある場合にその旨を周知することとされている。
注意喚起の判断方法について、「微小粒子状物質(PM2.5)に関する「注意喚起のための暫定的な指針」に係る判断方法の改善について(第2次)(平成26年11月28日;環境省水・大気環境局長)」では、午前5時から7時までの1時間値の平均値が85μg/m3を超過、または、午前5時から12時までの1時間値の平均が80μg/m3を超過した場合とされているが、判断方法は自治体によって異なる。
超微小粒子状物質
/ちょうびしょうりゅうしじょうぶっしつ
⇒「ナノ粒子」を参照
THC
/てぃーえいちしー
Total Hydrocarbon の略称で、メタンを含む全炭化水素のこと。一般的に、アルデヒド類などの含酸素化合物やアミン類などの含窒素化合物などは含まれない。
国は化学物質排出把握管理促進法(化管法)に基づいて、自動車等の排出ガスに含まれる対象化学物質の届出外排出量を推計する際には、一旦、THC排出量を算出し、各対象化学物質の排出量のTHC排出量に対する比率である対THC比率を乗じることにより、対象化学物質ごとの排出量を推計している。
低公害車
/ていこうがいしゃ
従来のガソリン車やディーゼル車と比べて、大気汚染物質(窒素酸化物や粒子状物質など)の排出が少ない(又はまったく排出しない)、燃費性能が優れているなど環境への負荷が少ない自動車のこと。環境配慮型自動車、エコカー等と呼ばれることもある。
日本では、電気自動車、圧縮天然ガス(CNG)自動車、メタノール自動車、ハイブリッド自動車を指すのが一般的であったが、平成13年に定められた「低公害車開発普及アクションプラン」において、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(昭和54年施行)に基づく燃焼基準の早期達成車で、かつ「低排出ガス車認定要綱」(平成12年施行)に基づく低排出ガス認定車も、低公害車と呼ばれるようになった。
また、類似の概念として最近使われるようになった「次世代自動車」は、温室効果ガスの排出が大幅に減少した自動車として、燃料電池自動車やプラグインハイブリッド自動車などが該当しており、これは大気汚染物質の排出の大小は直接的には関係していない。
ナノ粒子(超微小粒子状物質/UFP)
/なのりゅうし(ちょうびしょうりゅうしじょうぶっしつ/ゆーえふぴー)
ナノメートル(1メートルの10億分の1)のオーダーの粒子のことである。物質をナノメートルオーダーの粒子にすることで、特有の物性が表れることから、工業材料としての研究が進んでいる。カーボンブラック、二酸化チタンなどは既に大量生産されている工業ナノ粒子の例である。工業的に製造されるもの以外には、自動車等の排出ガス中にも含まれるものや、大気中でVOC等が光化学反応することにより二次生成するものもある。ミクロン(1メートルの100万分の1)サイズの粒子と比較して、肺への影響が大きいことなどが懸念され、生態影響についても研究が進められている。
UFPは、Ultra Fine Particleの略称。
二酸化硫黄(SO2)
/にさんかいおう
化学式"SO2"で表される無色の気体で腐卵臭がある。我が国では火力発電所、工場や自動車などのほか、船舶からも排出される。毒性としては、せきやたんなどの呼吸器系の疾患を生じさせる。我が国の有名な公害の一つである四日市ぜんそくでは、石油コンビナートから排出される硫黄酸化物が主な原因とされた。これを受け、四日市市での閉塞性呼吸器疾患の新規患者の発生数をその根拠として、大気汚染に係る二酸化硫黄の環境基準が定められた。
低硫黄燃料の普及や脱硫技術の実用化に伴い、我が国の大気中の二酸化硫黄濃度は、環境基準設定当時と比べて非常に低い水準にある。
参考 : 環境の基準 -その科学的背景- (日本化学会編)
二酸化窒素(NO2)
/にさんかちっそ(えぬおーつー)
窒素酸化物(NOx)の一種。常温・常圧で赤褐色の気体であり、主に化石燃料等の燃焼により発生した一酸化窒素が大気環境中で酸化されることにより、副生成物として非意図的に生成する。人の呼吸器系に悪影響を与えることから、環境基本法の規定に基づく告示(昭和48年制定;昭和53年改定)おいて環境基準「1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内又はそれ以下であること」が定められている。
二酸化窒素の短期曝露に係る指針
/にさんかちっそのたんきばくろにかかるししん
中央公害対策審議会長から環境庁長官宛ての昭和53年3月22日付け答申「二酸化窒素の人の健康影響に係る判定基準について」のなかで示された、二酸化窒素濃度の短期曝露に係る指針のこと。1時間曝露を対象としており、人の中枢神経系や肺機能への影響といった人の志願者に対する研究や動物実験等の知見を総合的に判断して、短期曝露に係る指針として0.1〜0.2ppmの値が示された。なお、現行の二酸化窒素に係る環境基準は、「1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内又はそれ以下であること」であるが、昭和53年7月17日付けの環境庁大気保全局長通知「二酸化窒素に係る環境基準の改定について」において、環境基準を維持することでこの二酸化窒素の短期曝露に係る指針をも高い確率で確保することができるとされている。
二次生成
/にじせいせい
大気汚染物質が発生源から直接的に排出されるものとは別に、大気中での光化学反応等によって生成されるものもあるため、そのような大気中での生成過程のことを二次生成と呼ぶ。二次生成粒子の生成と言い換えることができる。光化学オキシダントは大気中での光化学反応による生成のみが想定されるため二次生成とは表現されず、PM2.5等の粒子状物質に関連して使われる表現である。
NOx
/のっくす
⇒「窒素酸化物(NOx)」を参照
野焼き
/のやき
屋外で廃棄物を焼却すること。我が国では「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」や各自治体が定める条例により原則として禁止されているが、農業残渣の焼却や宗教上の行事等が一部例外行為として認められている。 また、大規模な野焼きによりPM2.5が広域的に高濃度となる事例が報告されている。
排ガス基準
/はいがすきじゅん
自動車などの排気ガスの排出量として遵守すべき基準のこと。自動車などの排気ガスは、その走行状態によって汚染物質の濃度や排ガス量が大きく変化するため、通常は自動車などの走行状態に応じた基準値として、試験モード(例:10・15モード、JE05モード)を定めた上で"g/km"や"g/kWh"などの単位で排ガス基準が設定されている。
排ガス規制
/はいがすきせい
主に大気汚染防止法による排出ガス濃度に対する規制のこと。大気汚染防止法では、ボイラー等の固定発生源や自動車等の移動発生源に対する排ガス規制が設けられている。移動発生源の場合、自動車NOx・PM法などでも排ガス規制が行われている。
自動車に対する排ガス規制は窒素酸化物(NOx)や非メタン炭化水素(NMHC)等を対象に設けられ、技術開発の進展等を踏まえ、これまで段階的に規制値が強化されてきた。
排出規制海域(ECA)
/はいしゅつきせいかいいき(えか)
「大気汚染物質放出規制海域 (ECA)」と同義。
半揮発性有機化合物(SVOC)
/はんきはつせいゆうきかごうぶつ(えすぶいおーしー)
”SVOC” は ”Semivolatile Organic Compound” の略で、世界保健機関(WHO)による広義のVOCの分類では、沸点が260℃以上400℃未満の有機化合物のこととなっている。クロルピリホス(沸点:290℃)やフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(沸点:390℃)などがSVOCに該当している。
PM2.5
/ぴーえむにーてんご
浮遊粒子状物質(SPM)のうち、粒径が2.5μm(0.0025mm)以下と特に小さい物質のことであり、微小粒子状物質とも呼ばれる。浮遊粒子状物質(SPM)の中でも特に人の健康への影響が大きいとされており、平成21年9月に大気汚染に係る環境基準が「1年平均値が15μg/m3以下であり、かつ、1日平均値が35μg/m3以下であること。」と設定された。
PM2.5はディーゼル車の排気ガスなどに含まれて排出されるほか、大気中での光化学反応等による二次生成もあるとされており、その排出や生成のメカニズムが複雑であるため、効果的な対策の見極めが難しくなっている。
北京の米国大使館がPM2.5の測定データの公表を始めたため、2013年には中国のPM2.5問題が突然クローズアップされるようになり、我が国への影響も懸念されている。
VOC
/ぶいおーしー
⇒「揮発性有機化合物(VOC)」を参照
浮遊粒子状物質 (SPM)
/ふゆうりゅうしじょうぶっしつ (えすぴーえむ)
粒子状物質(PM)のうち、粒径が小さいため大気中に浮遊している大気汚染物質のこと。通常は英語のSuspended Particulate Matterの頭文字を使って"SPM"と呼ばれる。我が国では粒径が10μm(0.01mm)以下のものをSPMと定義し、その環境基準値を0.10mg/m3以下(1時間値の1日平均値)などと定めている。SPMには、工場等から排出される「ばいじん」やディーゼル自動車等から排出されるディーゼル排気微粒子(DEP)などが含まれており、 このうちDEPの対策として大気汚染防止法や自動車NOx・PM法に基づきPMの排出基準が定められた。
ブラックカーボン(BC)
/ぶらっくかーぼん(びーしー)
炭化水素を主成分とする化石燃料の不完全燃焼や野焼き等によって生じる黒色の微粒子であり、「黒色炭素」とも呼ばれる。太陽光を効率よく吸収するため、温室効果ガスの一種でもある。元素状炭素(EC)とほぼ同じ意味で使われる。
ベストミックス
/べすとみっくす
VOC対策のあり方について、平成16年の中央環境審議会による意見具申として盛り込まれた考え方であり、法規制(=確実な排出削減が保証されるもの)と事業者による自主的取組(=費用対効果の高い対策が期待されるもの)を最適に組み合わせた対策の枠組みとして提唱された。このうち、自主的取組は有害大気汚染物質の対策として高い効果を上げた実績があり、VOC対策においても自主的取組が中心的なものとして位置づけられ、その進捗状況を把握するため、年度ごとにVOCの排出インベントリが作成されている。
法令取扱分類
/ほうれいとりあつかいぶんるい
大気汚染防止法に基づく揮発性有機化合物(VOC)対策において、規制対象となる施設類型や施設規模等との関係に着目し、VOC排出量を把握(推計)する対象を分類したときの区分のこと。具体的には「(1)規制施設」、「(2)すそ切り以下施設」、「(3)対象外施設」、「(4)屋外等」の4区分のこと。これは法令に基づく用語ではなく、VOC排出インベントリの作成にあたって、推計対象を分類するために便宜的に表現したものである。
ホットソークロス
/ほっとそーくろす
ガソリン車において、エンジン停止後1時間以内に吸気管に付着したガソリンが発生する蒸発ガス。HSL(Hot Soak Loss)と略称される。
マルポール条約附属書VI
/まるぽーるじょうやくふぞくしょろく
マルポール条約(MARPOL条約)のうち、船舶からの大気汚染物質等の排出を規制しているのが「附属書VI 船舶からの大気汚染防止のための規則」である。
この附属書では、大気汚染防止を図る手法として、主に次の3つが規定されている。
2.硫黄酸化物や粒子状物質の排出を低減するための燃料中硫黄成分を規制する
燃料規制
3.一般的な海域と比べ、より大気環境への影響が懸念される地域に対して適用される
特別な排出基準・燃料基準等(「大気汚染物質放出規制海域(ECA)」参照)
なお排出基準及び燃料規制はIMOでレビューされ、段階的に強化されてきている。
ミネラルスピリット
/みねらるすぴりっと
工業用ガソリン4号の通称であり、主に塗料の希釈に用いられる石油系混合溶剤の一種である。JIS K 2201により、引火点30℃以上、終点205℃以下と規定されている。引火点が高く蒸発が遅いため、金属製品の洗浄などにも用いられる。一般にターペンとも呼ばれる。
MOVES
/むーぶす
米国環境保護庁(EPA)によって開発された自動車排ガス専用のシミュレーションモデルのこと。MOVESとは"Motor Vehicle Emission Simulator"の略である(MOVES2014a_2015年10月リリース)。車両走行時の排出に加え、ランニングロス(RL)、ホットソークロス(HSL)等の燃料蒸発ガスの排出量を予測できる。
モニタリング地点選定ガイドライン
/もにたりんぐちてんせんていがいどらいん
都道府県等による有害大気汚染物質のモニタリングを支援するため、環境省が作成するガイドラインのこと(H25.6時点では未公表)。中央環境審議会の第九次答申(H22.10.18)を踏まえ、環境省では有害大気汚染物質のモニタリング地点を合理的に配置するための方策について検討を重ね、その結果をガイドラインの形で取りまとめ、都道府県などに配布することとした。このガイドラインは、別途見直される予定の「大気汚染防止法第22条の規定に基づく大気の汚染の状況の常時監視に関する事務の処理基準」のうち、有害大気汚染物質に係る内容を補足するものと位置づけられる。
有害性評価値
/ゆうがいせいひょうかち
有害大気汚染物質のうちのA分類物質について、その物質ごとの有害性を評価するために定義された指標のこと。具体的には、国内外の機関において設定された大気環境基準値、吸入ユニットリスクに基づく10-5過剰発がんリスク相当濃度等に基づき、値の信頼性などを勘案して物質ごとに設定される。
UFP
/ゆーえふぴー
⇒「ナノ粒子」を参照
有害大気汚染物質
/ゆうがいたいきおせんぶっしつ
大気汚染の原因となる化学物質で、人に対する長期毒性(慢性毒性)を有する物質として大気汚染防止法に基づいて定義された物質のこと。有害大気汚染物質及び優先取組物質の指定は、中央環境審議会の答申「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について」として示されている。第二次答申(平成8年)では、全234物質、優先取組物質22物質、第九次答申(平成22年)では、全248物質、優先取組物質23物質が選定されている。
但し、これらの答申の中では「有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質リスト」として物質名が列記されているのに過ぎず、これらの物質は大気汚染防止法の第2条第13項に規定された有害大気汚染物質に該当するものと断定的に示されたものでははく、法令の中で物質名が列記されたものは存在していない。
優先取組物質
/ゆうせんとりくみぶっしつ
有害大気汚染物質のうち、健康リスクの程度に基づいて優先的に対策を講じる必要があると考えられる物質のこと。物質の有害性、大気環境濃度及び発生源等に係る体系的で詳細な調査、事業者の排出抑制のための自主的取組等が求められている。平成8年10月の中央環境審議会答申「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第二次答申)」において22物質が選定された後、平成22年10月の第九次答申において見直され、23物質が新たに選定されている。
有害大気汚染物質は大気汚染防止法第2条第13項で定義されているが、優先取組物質には法令による定義はなく、前記の答申の中で示されているものである。
ランニングロス
/らんにんぐろす
ガソリン車において、燃料タンク中のガソリンが走行に従って高温になり、キャニスタのパージ能力を超えて発生する蒸発ガス。RL(Running Loss)と略称される。
粒径
/りゅうけい
大気中に浮遊する粒子状物質の粒子径(空気動力学径)のこと。日本では粒径が10μm以下の浮遊粒子状物質(SPM)と2.5μm以下の微小粒子状物質(PM2.5)に対して環境基準等が設定されている。粒径がナノレベル(0.01μm程度)の粒子については、超微小粒子等と呼ばれている。
粒子数
/りゅうしすう