IUPAC命名法
/あいゆーぱっくめいめいほう
学術機関であるIUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)が定める化学物質の命名の一般原則。この原則に従った命名をすることで、化合物の構造式を一つに特定できるような名称をつけることが可能である。
ESPH
/いーえすぴーえいち
Working Group on the Evaluation of Safety and Pollution Hazards of Chemicals (化学薬品の安全性の評価を検討する作業部会)のこと。IMOのPPR小委員会に設置される作業部会であり、液体化学物質の有害性に係る査定及び関連事項に係る審議を行っている。
異性体
/いせいたい
組成式は同一だが、構造が異なる分子のこと。また、相互に異性体の関係にある化合物をグループとした場合、そのグループに属する個々の化合物を異性体と呼ぶこともある。異性の種類として、ブタンとイソブタンのように炭素骨格が異なる骨格異性や、パラクロルフェノールとオクトクロルフェノールのように官能基の配置が異なる位置異性、炭素の二重結合により置換基の非対称性が生じるシス-トランス異性などがある。
ダイオキシン類の一種であるポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)には135種類の異性体があり、それぞれ毒性も異なる。
一斉分析
/いっせいぶんせき
複数の化学物質の濃度分析を同時に実施する手法のこと。多数の化学物質の濃度を把握する必要がある場合に有用であり、環境水中の要調査項目のモニタリングへの適用等が検討されている。複数の化学物質の検量線データ等を事前にデータベースに登録しておき、特定の測定条件(使用する器具や手順、試薬等)で分析を行う方法などがある。
移動量
/いどうりょう
化管法の第五条第一項に基づき、第一種指定化学物質等取扱事業者が事業所ごとに把握することが必要とされている数量のうち、当該事業所の外に移動する第一種指定化学物質の数量のこと。化管法では、PRTRの移動量を「その事業活動に係る廃棄物の処理を当該事業所の外において行うことに伴い当該事業所の外に移動する量(中略)をいう。」と定義しているが、化管法施行規則第四条第三号では廃棄物の移動と共に「下水道への移動」も含めて数量の把握が必要とされている。
HBCD
/えいちびーしーでぃー
⇒「ヘキサブロモシクロドデカン」を参照
液体ばら積み貨物
/えきたいばらづみかもつ
ばら積み輸送される液体の貨物のこと。船舶による液体ばら積み貨物輸送は、SOLAS条約及びマルポール条約附属書Ⅱの規制対象となる。なお、マルポール条約附属書Ⅱにおいて「液体物質」は、「37.8℃において、蒸気圧が絶対圧で0.28MPaを超えない物質」として定義されている。 ⇒「有害液体物質」参照。
エッセンシャルユース
/えっせんしゃるゆーす
原則として使用が禁止されている化学物質等が、特定の目的のために不可欠である(他に代わるものがない)として例外的に使用を認められる場合がある。このように例外的に認められる用途のことを指す。例えば高蓄積性等の有害性が懸念されるPFOSはPOPs条約や化審法において使用が禁止されたが、半導体レジスト等の一部の用途では必要不可欠なものであるとして、エッセンシャルユースとして認められた。
MSDS
/えむえすでぃーえす
Material Safety Data Sheetの略で、 日本語では 「化学物質安全性データシート」 と呼ばれる。SDS(Safety Data Sheet)と呼ばれる場合も同義である。化学物質やそれを含む製品について、その含有成分や取扱い上の注意事項などを記した文書として、化学物質等を事業者間で取引するときに相手方に提供すべきものとされている。我が国では化学物質排出把握管理促進法の他、毒物及び劇物取締法や労働安全衛生法でもMSDSに関する規定があるが、その内容は法律によって異なっている。
近年では、REACH規制への対応などを目的として、MSDSでは十分に把握できない化学物質の含有情報を付加した"MSDSplus"や"AIS"などが業界主導で導入されるようになった。
化学物質環境実態調査(黒本調査)
/かがくぶっしつかんきょうじったいちょうさ(くろほんちょうさ)
化学物質の中には、製造、流通、使用、廃棄の各段階で適切な管理が行われない場合に、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼす可能性があるものもある。化学物質環境実態調査は、そのような化学物質について、一般環境中の残留状況を把握するために実施される調査のことである。実施主体は環境省であり、環境残留の有無が明らかでない化学物質を対象とした「初期環境調査」、初期環境調査で環境残留が確認された化学物質の残留状況をさらに精密に把握するための「詳細環境調査」、POPs条約の対象物質及びその候補となる可能性のある物質等を調査する「モニタリング調査」の3つの調査を基本とする。調査結果は、化審法の規制対象物質の追加や、環境リスク評価実施のための基礎資料など、各種の化学物質関連施策で活用される。
化学物質管理指針
/かがくぶっしつかんりししん
事業者による合理的な化学物質管理を促進するための指針として、化学物質排出把握管理促進法に基づき策定されたもの。PRTR制度などと異なり、化学物質管理指針は取組が求められる事業者が実質的に限定されていないため、中小零細企業も含めた幅広い事業者による取組の必要性が謳われている。
同指針においては、工程別に取り組むべき事項などが示されているものの、その内容が抽象的であることに加え、その根拠となる化学物質排出把握管理促進法では「化学物質管理指針に留意」した取組を求めているのに過ぎず、実効性を疑問視する指摘もある。
化学物質審査規制法 (化審法)
/かがくぶっしつしんさきせいほう (かしんほう)
正式には「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」といい、新たに製造・輸入する化学物質等の人や動植物に対する有害性を審査し、一定の化学物質の製造・輸入などを規制するための法律。我が国ではPCB汚染を契機として、世界に先駆けて1973年に化学物質の事前審査の仕組みとして化審法が制定された。
既存化学物質については、曝露性や有害性に基づき国によりリスク評価が実施される仕組みとなっており、最初のスクリーニングにより人や動植物への影響の可能性が考えられる物質(優先評価化学物質)について、さらに詳細なリスク評価が実施されることとなっている。
化学物質排出把握管理促進法 (化管法)
/かがくぶっしつはいしゅつはあくかんりそくしんほう (かかんほう)
正式には「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」といい、我が国にPRTR制度を本格導入することを主目的に制定された法律のこと。PRTR制度のほか、SDS制度や化学物質管理指針についての規定が柱となっている。
PRTRパイロット事業の経験を踏まえて制度設計され、法施行から約7年後に法制度の見直しが検討された結果、法律自体の改正は行わず、政令(化管法施行令)や省令(化管法施行規則)を改正することとなり、その新たな枠組みでPRTR制度等が開始された(概ね平成23年度から本格的に開始)。
化学物質審査規制法(化審法)と並び、環境リスクに基づく化学物質管理を促進するための基本的な法律と位置づけられる。
化管法施行規則
/かかんほうしこうきそく
正式には「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行規則」という。化管法に基づくPRTRの届出に必要な事項などを規定している。
化管法見直しの一環として化管法施行規則も一部改定され、PRTRの届出事項として「廃棄物の種類」などを追加する形で平成22年4月1日に公布(即日施行)された。
化管法施行令
/かかんほうしこうれい
正式には「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行令」という。化管法に基づくPRTR制度の対象業種や対象化学物質などを規定している。
化管法見直しの一環として化管法施行令も一部改定され、第一種指定化学物質及び第二種指定化学物質を見直すと共に、医療業をPRTRの届出対象業種に追加した形に改められ、平成20年11月21日に公布(平成21年10月1日から順次施行)された。
化管法見直し
/かかんほうみなおし
化管法の附則第三条で謳われた見直し規定に従い、平成18年11月の中央環境審議会への答申から始まった一連の検討と、それを踏まえたPRTR制度の枠組みの見直しのこと。中央環境審議会からの答申に基づき、化管法自体の改正は行わず、政省令の改正や法律の運用の見直しで対応することとなり、具体的には「(1)PRTR対象化学物質の見直し」、「(2)PRTRの届出対象業種に医療業を追加」、「(3)PRTRの届出事項に廃棄物の処分方法等を追加」、「(4)事業所ごとのPRTR届出データを実質的な公表に変更」などが行われた。
環境ホルモン
/かんきょうほるもん
「内分泌かく乱(化学)物質」の通称。世界保健機関・国際化学物質安全性計画(WHO/IPCS)における内分泌かく乱物質の定義は、「内分泌の機能に変化を与え、それによって個体やその子孫あるいは集団に有害な影響を引き起こす外因性の化学物質あるいは混合物」である。ポリ塩化ビフェニル類(PCB)、トリブチルスズ等が該当物質として取り上げられている。
平成10年には「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」が環境省(当時環境庁)から公表され、疑わしい物質としてリストアップされた67物質(65物質に修正)の実態調査等が行われ、平成17年からは「ExTEND2005」として見直された対応方針に基づいて各種取組が実施され、その取組状況のレビューなどを経て、平成22年には「EXTEND2010」として新たな方針が取りまとめられた。
※内分泌:分泌物を排出管を通さず、内分泌腺(分泌細胞)から血液中などに放出すること。
GESAMP-EHSグループ
/げさんぷいーえいちえすぐるーぷ
GESAMP Working Group on Evaluation of the Hazards of Harmful Substances Carried by Ships (WG1)のこと。GESAMPの作業部会のうち、船舶によって輸送される化学物質の有害性評価等を行っている。
GESAMPハザードプロファイル
/げさんぷはざーどぷろふぁいる
マルポール条約附属書Ⅱに基づく化学物質の汚染分類の評価を主な目的として、化学物質の有害性に関する 13 項目について、有害性の高さや性質に応じた数値又は記号(レーティング)を付すことにより、物質の性質を表すもの。GESAMP-EHSグループが策定したものであり、レーティングの基準は GHS に準じている(ただし、ハザードプロファイルではレーティングの数値が大きい方がより有害性が高いことを意味する)。GESAMPハザードプロファイルの一覧(GESAMP Composite List)は、PPR.1/Circular 等によって公表されている。
検出下限値
/けんしゅつかげんち
ある物質の濃度の測定によって検出が可能な最低濃度のことであり、「検出限界」とも呼ばれる。英語の ”Limit of Detection” の頭文字を取って ”LOD” とも略称される。定量下限値とは異なり、一般にはその定量下限値の1/3程度の濃度レベルである。測定結果がこの検出下限値に満たない場合は、その測定データが「不検出(ND)」(Not Detected)として記録される。
構造式
/こうぞうしき
化合物の分子を構成している各原子の結合の様子を書き表した化学式のこと。元素記号(例:炭素は"C")や結合の記号(例:二重結合は"="のような二重線)を使って表される。類似の概念として分子式や組成式があるが、例えば組成式では化学物質を構成する原子の数だけが表され、原子間の結合方法が示されない。有機化合物は異性体が多く、簡単な化合物を除いては分子式や組成式だけで物質を区別することはできないため、構造式を用いて表記されることが多い。
国際海上固体ばら積み貨物コード(IMSBCコード)
/こくさいかいじょうこたいばらづみかもつこーど(あいえむえすびーしーこーど)
International Maritime Solid Bulk Cargoes のこと。船舶による固体ばら積み貨物(穀物を除く。)の安全な輸送を推進することを目的として、貨物の危険性に関する情報の提供や評価方法、輸送方法等を定める規則である(なお、穀物の輸送については、ばら積み穀類の安全運送に関する国際規則(1991年の国際穀類規則)に定められている)。IMSBCコードでは、荷送人が船長に対し、貨物の性質に関する詳細な情報を提供することが義務づけられている。また、固体ばら積み貨物を海上輸送する際には、「種別A」(液状化するおそれのある物質)、「種別B」(化学的危険性を有する貨物)、または「種別C」(種別A、種別Bのいずれの危険性も有しない貨物)に分類することとされており、特定の貨物については、貨物の種別及びその他の関連情報がIMSBCコードの付録に掲載されている。
GHS分類
/じーえいちえすぶんるい
化学品の有害危険性に関するUN-GHSに基づく分類。環境に係る有害性については、水生環境有害性(急性毒性・慢性毒性)等に関する分類が行われ、人健康に係る有害性については、急性毒性、皮膚腐食性/刺激性、呼吸器/皮膚感作性、発がん性、生殖細胞変異原性、生殖毒性等に関する分類が行われる。各危険有害性について、危険有害性の強さに基づく複数の区分(例:水生環境有害性の急性毒性については区分1〜3)が設けられており、化学物質管理のための指標の一つとして一般的に用いられている。
持続性浮遊物質
/じぞくせいふゆうぶっしつ
ワックスや動植物油等の、海洋中において長期的に浮遊し続ける性質を有する物質のこと。GESAMPハザードプロファイルの評価項目として、①「密度 ≤ 海水(20℃で1,025 kg/m3)」、②「蒸気圧 ≤ 0.3 kPa」、③「溶解度 ≤ 0.1% (液体の場合) または ≤ 10% (固体の場合)」、④「動粘度 > 10 cSt(20℃)」を満たす物質として定義されている。近年、北欧海域においてワックスや動植物油等による環境被害が確認されたことを受けて、IMOにおいてマルポール条約附属書Ⅱの規制強化に関する議論が行われ、同附属書の改正(2021年1月発効予定)により、北欧海域において持続性浮遊物質に関する予備洗浄の要件が強化されることとなった。
重金属
/じゅうきんぞく
比重がおおむね4〜5以上の金属の総称であり、英語では ”heavy metal” と呼ばれ、アルミニウムやマグネシウム等の軽金属(light metal)に対比して使われる。水銀や鉛、カドミウム、マンガンなどが該当しており、有害な物質が多い。PM2.5の成分の一つにも位置付けられる。
水銀
/すいぎん
原子番号80の元素であり元素記号はHg。常温常圧で液体である唯一の金属である。排出源には火山活動等の自然起源の他、石炭の燃焼等の人為起源がある。有機水銀のひとつであるメチル水銀は特に強い毒性を持ち、水俣病の原因物質として有名である。
日本を含めた先進国では水銀の使用量が減少しているが、途上国では依然として利用されているため、2001年から国連環境計画(UNEP)が地球規模の水銀汚染についての対策を検討し、2013年10月には水銀のライフサイクル全体にわたって規制を行う 「水銀に関する水俣条約」 が採択された。
水銀に関する水俣条約
/すいぎんにかんするみなまたじょうやく
水銀および水銀化合物の人為的な排出が人の健康および環境に与えるリスクを低減するための包括的な規制を定める条約(2017年8月16日発効)。我が国は水俣病の経験国として、この条約案の取りまとめで主導的な役割を果たし、条約名に"Minamata"が付けられることとなった。2013年10月に、熊本県熊本市および水俣市で開催された国連環境計画(UNEP)主催の外交会議で採択・署名が行われた。
水銀の供給源および貿易、水銀添加製品、水銀を使用する製造工程、人力小規模金採掘(ASGM)、大気への排出、水・土壌への放出、保管、廃棄物の管理など水銀のライフサイクル全体にわたって規制を行う内容となっている。
水銀による環境の汚染の防止に関する法律
/すいぎんによるかんきょうおせんのぼうしにかんするほうりつ
2013年10月に採択された「水銀に関する水俣条約」を担保するための措置などを講じることを目的とし、2015年6月19日に公布された法律。国内において条約が効力を生じる日から施行される(一部は別途政令で定める日から施行)。また、同様の目的から「大気汚染防止法の一部を改正する法律」など既存の法令の改正による措置も講じられている。
「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」では、水銀の掘採、特定の水銀使用製品の製造、特定の製造工程における水銀などの使用、および水銀などを使用する方法による金の採取を禁止するとともに、水銀などの貯蔵および水銀を含有する再生資源の管理方法等について定めている。
すそ切り以下
/すそきりいか
法令の規定が一定規模以上の事業者や施設などに限って課せられる場合があり、その規模に満たない小規模な事業者や施設などを称して「すそ切り以下」と呼ぶ。
例えば、我が国の化学物質排出把握管理促進法に基づくPRTR制度では、化学物質の排出量・移動量の届出義務を「(1)常用雇用者数21人以上の事業者」、「(2)1物質以上の年間取扱量が1トン以上の事業所」といった条件を満たすところに課しているため、これらの条件をすべて満たす事業者(及び事業所)以外がすべて「すそ切り以下」に該当する。
また、廃棄物処理法に基づく産業廃棄物処理施設のように、施設種類によって規模要件のあるもの(例:汚泥の脱水施設)と規模要件のないもの(例:産業廃棄物の最終処分場)が混在している場合には、一部の施設種類のみ「すそ切り以下」が存在することになる。
前駆物質
/ぜんくぶっしつ
大気等の自然界において、ある化学物質Aが化学物質Bの化学反応によって生成される場合に、BはAの前駆物質と呼ばれる。例えば、光化学スモッグの原因である光化学オキシダントの主成分は対流圏オゾンであるが、このオゾンは大気中での光化学反応により、揮発性有機化合物と窒素酸化物から生成される。つまり、揮発性有機化合物と窒素酸化物は対流圏オゾンの前駆物質と言える。
第一種指定化学物質
/だいいっしゅしていかがくぶっしつ
化学物質排出把握管理促進法において、PRTR制度及びSDS制度の対象とされる化学物質のことであり、具体的な物質名は政令(化管法施行令)によって指定されている。これは、有害性と曝露性の両面から選定された化学物質であり、第二種指定化学物質(=MSDS制度のみ適用される)との差は曝露性が比較的高いことのみであり、有害性の程度による差ではない。
化管法が最初に施行されたときは、平成12年3月公布の政令で第一種指定化学物質はベンゼン等の354物質であったが、平成20年11月に公布された改正後の政令によって、第一種指定化学物質は462物質に増加した。
特定第一種指定化学物質は第一種指定化学物質の一部であり、改正後の政令ではCMR物質(C:発がん性、M:変異原性、R:生殖毒性、があるとされる物質)として、1,3-ブタジエン等の15物質が指定された。
第一種特定化学物質
/だいいっしゅとくていかがくぶっしつ
化審法のもとで有害性や曝露状況等の審査が行われた結果、「難分解・高蓄積・人又は高次捕食動物への長期毒性あり」と判断された物質。製造・輸入は許可制(原則禁止)となる。平成30年4月現在、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ヘキサクロロベンゼン(HCB)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)など33物質が第一種特定化学物質に指定されている。
ダイオキシン類
/だいおきしんるい
ごみの焼却等に伴って非意図的に生成される化学物質の一種で、世界保健機関(WHO)ではPCDD(75種類)、PCDF(135種類)、コプラナPCB(29種類)という三つのグループの総称として定義した。
我が国では平成11年に公布されたダイオキシン類対策特別措置法に基づき耐容一日摂取量や環境基準が設定されるとともに、大気等への排出が規制され、その排出量は劇的に減少した。ダイオキシン類の発生源ごとの排出量は、排出インベントリの形で年度ごとに作成・公表されている。すべての発生源からの合計では、平成9年に排出量が約8,000g-TEQだったが、平成21年までに約160g-TEQまで減少し(12年間で約98%の減少)、その後も漸減傾向が続いている。
対象化学物質
/たいしょうかがくぶっしつ
制度や調査などの対象となる化学物質のこと。PRTR制度の場合は、化管法の第一種指定化学物質と同義だが、「第一種指定化学物質」と表現するのは冗長になるため、「対象化学物質」と簡略化して呼ばれることがある。
対象業種
/たいしょうぎょうしゅ
法令の規定の中には、特定の業種を営む事業者だけが対象となるものが少なからずあるが、そのような規制等の対象になっている業種のこと。
化学物質排出把握管理促進法に基づく我が国のPRTR制度は、製造業や燃料小売業、高等教育機関といった業種を営む事業者に限って排出量・移動量の届出義務が課されているため、そのような業種のことを対象業種と呼んでいる。そのPRTR制度の場合、化管法施行令の改正によって医療業が対象業種に追加されたため、平成23年4月からは医療業を営む事業者も届出が必要になった。
代替
/だいたい
化学物質や化学品などを別のものに置き換えることで、従来使ってきた化学物質等の使用を取りやめることを目的に行われるのが一般的である。規制等の対象になった化学物質を別の物質に置き換える場合は「物質代替」と呼ばれ、その新たに使用を開始する物質のことを「代替物質」と呼ぶ。代替物質を選ぶとき、単に「規制対象でないから」といった理由で選ぶと、結果的に環境リスクなどが増加してしまうおそれがあるため、代替物質を合理的に選択する仕組みの構築が求められている。
多環芳香族炭化水素
/たかんほうこうぞくたんかすいそ
芳香族炭化水素が縮合した構造の化合物であり、二つ以上のベンゼン環が直接結合した形になっているもののこと。ベンゼン環を2つ持つナフタレンや3つ持つアントラセンなどが該当するが、縮合した構造となっていないビフェニルなどは多環芳香族炭化水素には該当しない。発がん性や変異原性といった有害性を示す物質が多く、英名Polycyclic Aromatic Hydrocarbons から通称PAHsとも呼ばれる。代表的な多環芳香族炭化水素であるベンゾ[a]ピレンは、有害大気汚染物質の優先取組物質に選定されている(中央環境審議会答申に基づく)。石油製品などに含まれており、ディーゼルエンジン等の使用でも生成し、その排気ガスにも含まれている。
TEQ
/てぃーいーきゅー
Toxicity Equivalency Quantity(毒性等量)の略。ダイオキシン類は異性体によって毒性の強さが大きく異なる。このためダイオキシン類の濃度や排出量等を評価する際、毒性を有する29の異性体のそれぞれの質量に対して0.00003〜1の範囲で設定された毒性等価係数(TEF)を乗じ、最も毒性の高い異性体である「2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(2,3,7,8-TCDD)」の毒性に換算した値が一般的に用いられる。例えばダイオキシン類「1mg-TEQ」は、毒性の強さが「1mgの2,3,7,8-TCDD」と同等であることを示しており、実際には1mg以上の質量がある。
低含有率物質
/ていがんゆうりつぶっしつ
製品中の含有率が低い (概ね1%未満の) 成分は、いわゆる「製品の要件」に該当しないため、化学物質排出把握管理促進法に基づくSDSが不要で、PRTRの届出においても把握義務がない。このように、含有率が低いため届出対象とならない第一種指定化学物質を低含有率物質と呼び、そのうち、当該製品自体の取扱量が大きく排出量が無視できないものは届出外排出量として推計することとしている。これまで、石炭火力発電所で使用される石炭について、その燃焼に伴って生じる排ガス及び排水に含まれる対象化学物質の排出量が「低含有率物質」として推計されている。
農薬の有効成分など、他にも届出外排出量が推計されている低含有率物質があるが、それらは「農薬」など独立した排出源の一部として別途推計されている。
特定化学物質
/とくていかがくぶっしつ
化審法の第一種特定化学物質と第二種特定化学物質の総称。化審法のもとで有害性や曝露状況等の審査を行い、人への長期毒性などの有害性が明らかになった場合に第一種特定化学物質や第二種特定化学物質に指定され、製造、輸入、使用について規制を受ける。 第一種特定化学物質と異なり、第二種特定化学物質では難分解性・高蓄積性といった条件に該当しない物質も指定される。
特定第一種指定化学物質
/とくていだいいっしゅしていかがくぶっしつ
化学物質排出把握管理促進法の第一種指定化学物質のうち、発がん性や変異原性、生殖毒性の何れかを持つため、特に注意すべき物質として政令(化管法施行令)で規定されているベンゼンやニッケル化合物等のこと。特定第一種指定化学物質に該当するものは、製品中の含有率が0.1wt%以上でSDSの対象となり、年間取扱量が0.5トン以上でPRTRの届出対象となり、それぞれすそ切りが低く設定されている。
従来の特定第一種指定化学物質は「発がん性」を有する物質のみ選定されていたが、特定第一種指定化学物質等の選定基準が前記のとおり見直された結果、1,3-ブタジエンやホルムアルデヒドなどが特定第一種指定化学物質に追加され、 現時点では15物質が指定されている。
特別要件施設
/とくべつようけんしせつ
PRTRの届出要件の一つであり、物質ごとの年間取扱量による要件の代わりに、特定の施設が設置されている場合にPRTRの届出が必要とされる施設種類のこと。具体的には、以下の4種類が化管法施行令によって規定されている。
@鉱山保安法により規定される特定施設(金属鉱業、原油・天然ガス鉱業に属する事業を営む者が有するものに限る。)
A下水道終末処理施設(下水道業に属する事業を営む者が有するものに限る。)
B廃棄物の処理及び清掃に関する法律により規定される一般廃棄物処理施設および産業廃棄物処理施設(ごみ処分業および産業廃棄物処分業に属する事業を営む者が有するものに限る。)
Cダイオキシン類対策特別措置法により規定される特定施設
但し、これらの施設を設置している事業者であっても、従業員数の要件を(Cの場合は業種の要件も)満たしていないときは、PRTRの届出は求められていない。
届出外排出量
/とどけでがいはいしゅつりょう
化学物質排出把握管理促進法に基づく我が国のPRTR制度において、届出排出量以外の排出量として、同法の第9条に基づいて国が推計した排出量のこと。省令に基づき「対象業種」、「非対象業種」、「家庭」、「移動体」の4区分で排出量が推計・公表されるとともに、「農薬」や「塗料」、「自動車」といった排出源ごとの排出量も推計・公表されている。
この届出外排出量は、農薬や塗料といった排出源ごとに製品の全国出荷量や含有率、排出率等の調査を行い、さまざまな仮定を置いて推計するのが一般的であり、これまで21種類の排出源を対象として排出量の推計結果が公表されてきた。このように数多くの排出源を対象として届出外排出量を推計・公表しているのが、我が国のPRTR制度の大きな特徴の一つとなっている。
届出事項
/とどけでじこう
PRTRの場合、届出書や別紙に記載すべき事項として、事業所の業種名や物質ごとの排出量などを指す。改正後の化管法施行規則(H22年4月1日施行)では、届出事項として「廃棄物の種類」、「廃棄物の処理方法」、「移動先の下水道終末処理施設の名称」の三つが追加された。
届出排出量
/とどけではいしゅつりょう
PRTRの場合、化学物質排出把握管理促進法第5条第2項に基づき事業者から届出される事業所別の化学物質排出量のことを指す。化学物質排出把握管理促進法第9条に基づいて推計される届出外排出量と対比して「届出排出量」と呼ばれる。PRTRでは「排出」と「移動」は区別されるため、届出排出量の中には届出される移動量は含まれない。
取扱量
/とりあつかいりょう
化学物質の「製造」、「使用」、「その他の取扱い」の対象となる数量のこと。化学物質排出把握管理促進法によるPRTRの届出が必要となる第一種指定化学物質等取扱事業者の要件の一つとして、事業所ごとの1年間の取扱量が1トン以上などの要件が規定されている。
この取扱量は、事業者が排出量を把握するための最も基本的な情報となる場合が多い。そのため、化管法見直しの検討段階では、この取扱量を届出事項に追加する必要性が議論されたものの、その取扱量データの活用方法として合意に至らず、見送られた経緯がある。
難燃剤
/なんねんざい
樹脂や繊維等、可燃性のある物質を燃焼しにくくする、または大きく燃え広がらないようにする目的で添加される薬剤のこと。火災による人的・経済的損失を防止するため、JIS規格等で要求される難燃性能に合わせて添加される。難燃剤の主な成分には、ハロゲン系やリン系(以上有機難燃剤)、金属水酸化物やアンチモン系(以上無機系難燃剤)、これらの複合がある。また、要求される難燃性能に加え、環境安全面からも、電気電子機器廃棄物指令(WEEE)、有害性化学物質管理指令(RoHS)等の、有害性、発煙性、リサイクル性等で規制されるようになっている。この動きを受け、近年は、環境対応型の難燃剤として、非ハロゲン系のものの開発が進められている。
ニッケル
/にっける
天然に存在する金属元素(原子番号28)のこと。元素記号はNi。ニッケル鉱石は23を超える多くの国で産出される豊富な資源であり、腐食や酸化に対する耐性があること、合金化が容易などの特質を有することから、工業製品や日用品の汎用的な素材である。他の金属類と同様に、一定レベル以上の摂取により人の健康にも悪影響があることから、環境中での存在状況に係る管理が必要とされている。日本国内では、平成24年7月23日に食品安全委員会よりニッケルの食品健康影響評価が実施され、ニッケルの耐容一日摂取量(TDI)として4μg/kg体重/日という基準が定められた。
燃料蒸発ガス
/ねんりょうじょうはつがす
ガソリン車において、走行中や駐車中に燃料タンクから蒸発・排出されるガスを指す。
国は、化学物質排出把握管理促進法(化管法)に基づいて自動車及び二輪車の「燃料蒸発ガス」として、3種類の燃料蒸発ガスについて対象化学物質の届出外排出量の推計を行っている。 推計対象としているのは、ダイアーナルブリージングロス(DBL)、ホットソークロス(HSL)、ランニングロス(RL)である。その他にガソリンスタンドにおいて、タンクローリーから地下タンクに燃料を受け入れる際に排出される「受入ロス」と、自動車に給油を行う際に、燃料タンク内に蒸発していた蒸気が押し出される「給油ロス」があるが、これは原則として届出の対象となっているため、自動車(燃料蒸発ガス)としては推計していない(一部は「すそ切り以下事業者」として推計されている)。
農薬
/のうやく
主に農作物を害する菌、昆虫などの防除に用いられる殺虫剤、殺菌剤や植物の成長を阻害する除草剤であり、農薬取締法により管理される薬剤のこと。同法に基づく登録を受けた薬剤に限り、製造・輸入等が可能となる。一般的には工場で定常的に使用される化学物質とは異なり、田畑等に散布された使用量のほぼ全量が環境中に排出されることや、使用される時期や地域が限定的であることに特徴があることから、化学物質管理の分野においては「農薬」として一般化学物質とは異なる扱いで議論されることが多い。
パーフルオロオクタンスルホン酸 (PFOS)
/ぱーふるおろおくたんするほんさん (ぴーふぉす)
POPs条約の第4回締約国会議で附属書への掲載が決められた物質の一つで、我が国では化学物質審査規制法の第一種特定化学物質に指定され、その塩と併せて原則として製造・輸入が禁止された物質のこと。消火剤や金属加工のエッチング剤などに使われてきたが、難分解性・高蓄積性といった特徴があるため、水環境中で高い頻度で検出され、生物の体内での蓄積も問題となっている。
化学物質審査規制法施行令(第1条)における物質名の表記は「ペルフルオロ(オクタン-1-スルホン酸)」となっている。
排出源
/はいしゅつげん
化学物質などが排出される場所や製品等の区分のこと。「塗料」や「農薬」といった製品種類や「自動車」といった移動体種類などが該当する。
PRTR
/ぴーあーるてぃーあーる
PRTRとは"Pollutant Release and Transfer Register"の頭文字を取った略語であり、日本語では「化学物質排出移動量届出制度」などとも呼ばれる。PRTRは、多様な化学物質の環境への排出量を事業者が自ら把握し、その行政機関に報告されたデータを公表することにより、事業者の自主的な管理を促進するための仕組みまたはその制度のことである。1996(平成8)年2月に経済協力開発機構(OECD)が加盟各国に理事会勧告を出したのを受け、我が国でもPRTRの導入に向けた検討が始まり、平成11年7月の化学物質排出把握管理促進法の公布によって法制化された。日本のPRTR制度は、届出外排出量を幅広く推計・公表していることも大きな特長となっている。
PRTRデータ
/ぴーあーるてぃーあーるでーた
PRTR制度に基づいて公表されている化学物質の届出データ(排出量・移動量)や届出外排出量のこと。そのうち届出データについては、業種別や都道府県別などの集計データの他、個別事業所の(集計前の)データも含まれる。
PRTRパイロット事業
/ぴーあーるてぃーあーるぱいろっとじぎょう
我が国では化学物質排出把握管理促進法に基づき平成11年にPRTR制度が法制化されたが、その法律の施行前に国が一部地域で試行的に実施したPRTRのこと。平成9年度から平成13年度まで5回実施されたが、そのPRTRパイロット事業を通じて届出要件や届出事項などに関する課題を抽出し、PRTRの法制度の構築や法の運用に関する有用な情報が得られた。
PCB
/ぴーしーびー
ポリ塩化ビフェニルのことであり、塩素の数や塩素が置換する位置が異なる209種類の化合物の一般的な名称である。熱安定性や絶縁性が高いことから過去には絶縁油等の幅広い用途で使用された実績があるが、毒性、生物蓄積性等が高いため、我が国では化学物質審査規制法(化審法)の第一種特定化学物質に指定され、製造や使用は禁止されている。
平成24年には、一部の有機顔料には非意図的に生成したPCBが含まれていることが判明し、国はその実態調査を行い、事業者への行政指導が行われた。
ppt
/ぴーぴーてぃー
”Parts Per Trillion” の略で、1兆分の1の数量であることを意味する。しばしば、濃度の単位(気体の体積比率)として使われる。濃度単位のppbと比べて1,000分の1の単位であるため、非常に濃度の低い物質の単位として使われる。
ppb
/ぴーぴーびー
”Parts Per Billion” の略で、10億分の1の数量であることを意味する。しばしば、濃度の単位(気体の体積比率)として使われる。 ”Parts Per Million” の略である ”ppm” は百万分の1の大きさであるため、その1,000分の1の大きさを表している。
PFOS
/ぴーふぉす
⇒「パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)」を参照
非対象業種
/ひたいしょうぎょうしゅ
化学物質排出把握管理促進法に基づくPRTR制度は、製造業等の対象業種を営む事業者に限って届出義務があるため、その他の業種(例:農業や建設業)は従業員規模や取扱量等の如何によらず届出義務がない。そのような業種のことを非対象業種と呼び、そのような事業者からの排出量はすべて届出外排出量として推計すべき対象となる。 非対象業種による化学物質の排出としては、「農地における農薬散布」や「建築物の塗装」等に伴う排出が該当する。
非点源排出量
/ひてんげんはいしゅつりょう
工場などの固定発生源以外の小規模で分散した発生源からの排出量のことで、具体的には家庭や移動体、中小零細企業の事業所などが該当する。「非点源」とは英語の"Non-Point Source"を直訳したものである。
非点源排出量は届出外排出量とほぼ同義だが、我が国のPRTR制度では、届出外排出量のうち「すそ切り以下排出量」を除いたものを非点源排出量と呼ぶ決まりとなっている。
副生
/ふくせい
化学物質の合成反応の目的生成物質以外の物質が生成すること。顔料では、原料としてクロロベンジジンやジアゾニウム塩を使用することがあり、顔料を合成する段階でポリ塩化ビフェニルやヘキサクロロベンゼンなどの化審法の特定第一種化学物質を副生してしまうことが問題となった。
物質代替
/ぶっしつだいたい
ある化学物質の有害性などの悪影響を避けるため、同様の機能を持つ別の化学物質に変更すること。塩素系洗浄剤から炭化水素系洗浄剤への変更や、鉛フリー半田への変更などが代表的な物質代替である。
新たに使用する化学物質については、有害性等の科学的知見が少ない化学物質である場合が少なからずあり、限られた情報だけで物質代替が進められ、必ずしも合理的な物質代替が行われていない場合があるとの指摘がある。したがって、化管法見直しの一環として出された中間答申(平成19年8月)においても、物質代替が適切に行われるよう、国が適切な情報提供に努めることが必要とされた。
平均含有率
/へいきんがんゆうりつ
製品などの混合物に含まれる化学物質ごとの含有率の平均値のこと。「標準組成」と表現する場合も基本的に同義である。製品等の種類が同じでも、個々の製品ごとに含有率が異なるのが一般的であるため、それらを何らかの方法で平均し、その製品種類としての代表的な含有率として設定したもの。例えば塗料の場合、「建物用のアクリル樹脂系塗料(常温乾燥型)」といった塗料種類に対応した平均含有率(標準組成)が設定されている。PRTRの届出外排出量の推計においては、廃棄物についても「廃プラスチック類」等の廃棄物種類ごとの平均含有率という概念を導入し、廃棄物処理に伴う排出量を推計することが試みられている。
ヘキサクロロベンゼン
/へきさくろろべんぜん
ヘキサブロモシクロドデカン
/へきさぶろもしくろどでかん
臭素系の化学物質であり、主に難燃剤として用いられてきた。我が国では建材用XPS・EPS、防炎カーテン、自動車用シート等の燃えやすい素材を効率よく難燃処理できる物質として普及したが、近年、高蓄積性・難分解性が指摘されたことから平成25年(2013年)4月のPOPs条約締約国会合(COP6)において附属書A物質(廃絶)への追加掲載が採択され(効力発生は平成26年11月)、我が国でも化審法の第一種特定化学物質に指定された(政令改正:平成26年5月1日)。
ペルフルオロ(オクタン−1−スルホン酸)(PFOS)
/ぺるふるおろおくたんいちするほんさん
⇒「パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)」を参照
芳香族炭化水素
/ほうこうぞくたんかすいそ
分子構造が炭素(C)と水素(H)だけからなる炭化水素のうち、分子構造の中にベンゼン環を一つ以上含む物質のこと。ベンゼン環が縮合した分子構造を持つものは、多環芳香族炭化水素(PAH)と呼ばれ、一般に揮発性が低く、PM2.5の構成要素の一つに位置づけられる。
POPs条約
/ぽっぷすじょうやく
正式名称は、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」。残留性有機汚染化学物質(Persistent Organic Pollutants;略称POPs)とは、難分解性、高蓄積性、長距離移動性を有する人及び生態系に対して有害な化学物質のことである。POPsのうち大気中で蒸発しやすものは、蒸発と雨水による降下を繰り返し世界中へ拡散する(バッタ効果)。また、海洋中では、魚介類への蓄積やイルカ等の大型魚類の移動により汚染が拡大することがある。
POPsによる地球規模の汚染への対策は国際的な協調が不可欠であったため、12種類のPOPsについて製造・使用等を原則禁止する条約として、POPs条約が2001年5月にストックホルムで成立した(2004年5月 発効)。
なお、2009年5月に開催されたPOPs条約の第4回締約国会議(COP4)では、撥水剤(はっすいざい)や泡消火剤に使用されているペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩や農薬のクロルデコン等の9種12物質が新たに同条約の対象(附属書A〜Cに追加掲載)となり、その後さらに、第8回締約国会議(COP8)までにデカブロモジフェニルエーテル(デカBDE)や短鎖塩素化パラフィン(SCCP)等が随時追加されている。
マテリアルフロー
/まてりあるふろー
事業活動に伴って製品の製造、出荷、使用、廃棄などが行われることについて、それらに含まれる化学物質(特に金属等の元素)に着目したライフサイクルでの流れのこと。通常は「我が国におけるマテリアルフロー」といった形で、国などの大きな単位で把握が試みられる。一般に、物質のマテリアルフローを明らかにすることによって、環境対策などの優先順位の判断などを合理的に行うことが可能になるものと考えられている。
類似の概念として「マスフロー」という言葉が使われるが、これは一つの事業所や工程などの小さな単位において、質量保存の原理に基づいて排出量などを算定するときの基礎となる考え方である。
マルポール条約附属書Ⅰ
/まるぽーるじょうやくふぞくしょいち
マルポール条約の附属書のうち、油による海洋環境汚染を規制するためのものであり、「油による汚染の規制のための規則」のこと。附属書Ⅰにおいて「油」は、「原油、重油、スラッジ、廃油、精製油その他のあらゆる形態の石油(附属書Ⅱの適用を受ける石油化学物質を除く。)をいい、付録Ⅰに掲げる物質を含むが、これらに限られない。」と定められており、附属書Ⅱの対象(有害液体物質)が附属書Ⅰの対象から除外されているところであるが、近年、IMOにおいて、附属書ⅠとⅡの対象物質の区別が明確でないことが指摘されており、その区別を明確にするための指針作成等の議論が行われている。
UN-GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)
/ゆーえぬじーえいちえす(かがくひんのぶんるいおよびひょうじにかんするせかいちょうわしすてむ)
化学品の危険有害性を世界的に統一された基準によって分類しその結果を統一的なラベルやSDSによって提示することにより、化学品の効率的な管理や安全/適正な取り扱いを促進するための枠組み。2003年7月に国連勧告として採択された後、化学品の分類および表示に関する世界調和システムに関する専門家小委員会(GHS小委員会)によって継続的に見直しが行われている。 GHSに定められる危険有害性の判定基準は、化学物質の有害性に基づく分類を行う際の標準的な基準として一般的に用いられている。
有機塩素系化合物
/ゆうきえんそけいかごうぶつ
塩素を含む組成を持つ有機化合物のことで、ジクロロメタンとトリクロロエチレンなどが代表的なものである。脱脂・洗浄効果が高く、金属部品の脱脂洗浄などに幅広く使われるようになったが、発ガン性などの問題があり、近年では敬遠される傾向がある。
土壌汚染の原因となる場合が多く、土壌汚染対策法施行規則の第一種特定有害物質(揮発性有機化合物)に指定されているものは、大半が(ベンゼン以外の11物質すべてが)有機塩素化合物である。
優先評価化学物質
/ゆうせんひょうかかがくぶっしつ
人または生活環境動植物への被害を生ずるおそれがあるかどうかについて、リスク評価を優先的に行う必要があるとされ、化学物質審査規制法の規定に基づいて公示される化学物質のこと。優先評価化学物質を前年度に1t以上製造・輸入した事業者は、製造・輸入実績数量や用途について届出を行わなければならない。
>>> 優先評価化学物質一覧(経済産業省)
予備洗浄
/よびせんじょう
ばら積み液体貨物を荷卸しした後に、荷卸しをした港を離れる前に当該貨物が積載されていた貨物タンクを要件に従い洗浄する作業のこと。マルポール条約附属書Ⅱ第13規則において、X類の有害液体物質等、環境リスクが高い物質を対象として実施することが定められており、具体的な方法は、同附属書付録6(予備洗浄方法)に詳細に定められている。なお、海防法では、第九条の二第3項の「事前処理の方法」の一部として定められている。