ダイアーナルブリージングロス
/だいあーなるぶりーじんぐろす
ガソリン車において、駐車中に気温の変化等により燃料タンクで蒸発したガソリン蒸気が破過したキャニスタから大気へ放出されることにより発生する蒸発ガス。DBL(Diurnal Breathing Loss)と略称される。
第一種指定化学物質
/だいいっしゅしていかがくぶっしつ
化学物質排出把握管理促進法において、PRTR制度及びSDS制度の対象とされる化学物質のことであり、具体的な物質名は政令(化管法施行令)によって指定されている。これは、有害性と曝露性の両面から選定された化学物質であり、第二種指定化学物質 (=MSDS制度のみ適用される) との差は曝露性が比較的高いことのみであり、有害性の程度による差ではない。
化管法が最初に施行されたときは、平成12年3月公布の政令で第一種指定化学物質はベンゼン等の354物質であったが、平成20年11月に公布された改正後の政令によって、第一種指定化学物質は462物質に増加した。
特定第一種指定化学物質は第一種指定化学物質の一部であり、改正後の政令ではCMR物質(C:発がん性、M:変異原性、R:生殖毒性、があるとされる物質)として、1,3-ブタジエン等の15物質が指定された。
第一種特定化学物質
/だいいっしゅとくていかがくぶっしつ
化審法のもとで有害性や曝露状況等の審査が行われた結果、「難分解・高蓄積・人又は高次捕食動物への長期毒性あり」と判断された物質。製造・輸入は許可制(原則禁止)となる。平成30年4月現在、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、ヘキサクロロベンゼン(HCB)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)など33物質が第一種特定化学物質に指定されている。
ダイオキシン類
/だいおきしんるい
ごみの焼却等に伴って非意図的に生成される化学物質の一種で、世界保健機関(WHO)ではPCDD(75種類)、PCDF(135種類)、コプラナPCB(29種類)という三つのグループの総称として定義した。
我が国では平成11年に公布されたダイオキシン類対策特別措置法に基づき耐容一日摂取量や環境基準が設定されるとともに、大気等への排出が規制され、その排出量は劇的に減少した。ダイオキシン類の発生源ごとの排出量は、排出インベントリの形で年度ごとに作成・公表されている。すべての発生源からの合計では、平成9年に排出量が約8,000g-TEQだったが、平成21年までに約160g-TEQまで減少し(12年間で約98%の減少)、その後も漸減傾向が続いている。
大気汚染常時監視測定局
/たいきおせんじょうじかんしそくていきょく
⇒「常時監視」を参照
大気汚染物質放出規制海域 (ECA)
/たいきおせんぶっしつほうしゅつきせいかいいき
Emission Control Areaの略。マルポール条約附属書VIで定められ、一般の海域よりも厳しい規制(NOx排出、燃料中硫黄分濃度の上限値)が課せられる海域を示す。現時点で大気汚染放出規制海域として指定されているのは、バルト海、北海(以上硫黄成分濃度規制のみ)、北米海域及び米国領カリブ海域(以上硫黄成分濃度規制及びNOx排出規制)である。
大気汚染防止法
/たいきおせんぼうしほう
大気汚染を防止して人の健康の保護などを促進するための法律で、工場・事業場からの窒素酸化物等の排出規制や自動車排気ガスの許容限度などが規定されている。平成8年度の改正で有害大気汚染物質に係る取組が追加され、さらに平成16年の改正では揮発性有機化合物(VOC)の排出規制などが追加された。また、平成22年の改正では、ばい煙の測定結果の改ざん等に対する罰則などが新設された。都道府県による大気の汚染の状況の常時監視も、この大気汚染防止法に基づいて実施されている。
大気汚染防止法に基づく常時監視の事務処理基準
(※大気汚染防止法における事務処理基準について)
/たいきおせんぼうしほうにもとづくじょうじかんしのじむしょりきじゅん
正式名称は「大気汚染防止法第22条の規定に基づく大気の汚染の状況の常時監視に関する事務の処理基準」である。地方自治法第245条の9に基づき、平成13年に環境省環境管理局長より各都道府県知事及び政令市長へ通達された。地方公共団体が大気汚染状況の常時監視に関する法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準であり、測定局の数や配置、測定方法等について定めている。
大気拡散モデル
/たいきかくさんもでる
大気汚染を予測するためのモデルのうち、大気の状態が定常であることを仮定し構築されたモデル。流体力学的には、移流拡散方程式の定常状態 (∂φ(t,x)/∂t=0、 φは特定の物理量) を仮定した場合の解析解である。
ある地点での大気の状態(風速、気圧、気温)は、周辺地の大気の状態に応じて時間的に変化するが (例えば高気圧側から低気圧側に風が吹くなど) 、大気拡散モデルでは、その時間的変化がないと仮定する。
環境分野においては、特定の発生源(工場、車など)から大気汚染物質が定常的に排出されると仮定したモデルがあり、プルーム・パフモデルとよばれている。
大気拡散モデルは、短期的又は複雑な地形での予測、大気中の水の相変化や化学反応を伴う大気汚染物質の濃度予測には不向きであり、その場合は定常状態を仮定せずに流体力学の移流拡散方程式をコンピュータにより直接的に解く3次元流体モデルを用いることもある。
対象化学物質
/たいしょうかがくぶっしつ
制度や調査などの対象となる化学物質のこと。PRTR制度の場合は、化管法の第一種指定化学物質と同義だが、「第一種指定化学物質」と表現するのは冗長になるため、「対象化学物質」と簡略化して呼ばれることがある。
対象業種
/たいしょうぎょうしゅ
法令の規定の中には、特定の業種を営む事業者だけが対象となるものが少なからずあるが、そのような規制等の対象になっている業種のこと。
化学物質排出把握管理促進法に基づく我が国のPRTR制度は、製造業や燃料小売業、高等教育機関といった業種を営む事業者に限って排出量・移動量の届出義務が課されているため、そのような業種のことを対象業種と呼んでいる。そのPRTR制度の場合、化管法施行令の改正によって医療業が対象業種に追加されたため、平成23年4月からは医療業を営む事業者も届出が必要になった。
帯水層
/たいすいそう
地層の分類の一種であり、水をとおしやすい砂岩・礫岩などで構成される地層が、地下水によって飽和されている場合をいう。
代替
/だいたい
化学物質や化学品などを別のものに置き換えることで、従来使ってきた化学物質等の使用を取りやめることを目的に行われるのが一般的である。規制等の対象になった化学物質を別の物質に置き換える場合は「物質代替」と呼ばれ、その新たに使用を開始する物質のことを「代替物質」と呼ぶ。代替物質を選ぶとき、単に「規制対象でないから」といった理由で選ぶと、結果的に環境リスクなどが増加してしまうおそれがあるため、代替物質を合理的に選択する仕組みの構築が求められている。
代表性
/だいひょうせい
「データの代表性」といった形で使われ、測定等によって得られたデータが母集団の全体を代表するのにふさわしいと考えられる程度のこと。例えば、自動車の交通量をカウントするとき、大型連休の期間に得られたデータは「平常時の交通量」とは大きく異なると考えられるため、1年間の交通量を推定するためのデータとして使うのは不適当で、「データの代表性が低い」などと表現される。
多環芳香族炭化水素
/たかんほうこうぞくたんかすいそ
芳香族炭化水素が縮合した構造の化合物であり、二つ以上のベンゼン環が直接結合した形になっているもののこと。ベンゼン環を2つ持つナフタレンや3つ持つアントラセンなどが該当するが、縮合した構造となっていないビフェニルなどは多環芳香族炭化水素には該当しない。発がん性や変異原性といった有害性を示す物質が多く、英名Polycyclic Aromatic Hydrocarbonsから通称PAHsとも呼ばれる。代表的な多環芳香族炭化水素であるベンゾ[a]ピレンは、有害大気汚染物質の優先取組物質に選定されている(中央環境審議会答申に基づく)。石油製品などに含まれており、ディーゼルエンジン等の使用でも生成し、その排気ガスにも含まれている。
WHO
/だぶりゅーえいちおー
⇒「世界保健機関」を参照
ダブルカウント
/だぶるかうんと
複数の条件に該当するものがあるとき、各条件に合致する数量を別々に算出し、それらを単純に合計することによって正味の数量を超えた数量になってしまうこと。一般に、データの集計方法として不適当な方法であり、それらの重複を排除した正味の数量として集計することが必要とされている。
地域メッシュ統計
/ちいきめっしゅとうけい
緯度と経度に沿った直線で地理的な範囲を網の目(メッシュ)に区切ったものを地域メッシュと呼び、その地域メッシュごとの数量として整備された統計データを地域メッシュ統計という。過去の国勢調査や事業所・企業統計調査のデータなどが地域メッシュ統計として整備されているが、3次メッシュの場合、全国にあるメッシュ数は38万あまり(値がゼロのメッシュも含む)と膨大であり、目的に応じて必要なデータを購入して使うのが一般的である。
蓄積性
/ちくせきせい
⇒「生物蓄積性(蓄積性)」を参照
地下水
/ちかすい
地下に存在する水のうち、ある帯水層に満たされた状態で存在している水のこと。井戸による揚水によって人間活動に多く利用されているが、河川等の公共用水域とは異なった独自の問題があるため、その保全のため独自の(公共用水域から切り離した)法規制等が存在している。例えば、「地下水の水質汚濁に係る環境基準」は、地下水に特有の問題があることを考慮して、公共用水域を対象とした「水質汚濁に係る環境基準」と異なる項目が設定されている場合がある(例:塩化ビニルモノマー)。
地下水保全計画
/ちかすいほぜんけいかく
地下水は古くから飲料水・農業用水・工業用水等に利用されてきたが、戦後の高度成長に伴う過度の揚水による地下水位の低下や工場排水などによる地下水汚染等、地下水を取り巻く環境が悪化してきた。そこで、地方自治体では、地域の特性を考慮した上で、かん養対策・節水対策・水質保全対策・条例等による取水規制などを柱とした地下水保全計画を策定し、地下水の保全に取り組んでいる。
近年では、地下水の保全のみにとどまらず、降雨・表層水(河川水等)の流れ・かん養・蒸発散・利用といった水循環を考慮した保全計画が多くの地方自治体で策定されている。
窒素酸化物 (NOx)
/ちっそさんかぶつ (のっくす)
空気中や燃料中の窒素成分がエンジンやボイラー等での燃焼によって酸化され、非意図的に生成する大気汚染物質のことであり、主として一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)から成る。このような窒素酸化物(NOx)は、健康影響をもたらすばかりでなく、光化学スモッグの原因物質の一つであるため、大気汚染防止法等により、ばい煙発生施設や自動車等からの排出が規制されている。
自動車等の排気ガスとして排出する段階では一酸化窒素(NO)であっても、大気環境中で酸化され二酸化窒素(NO2)に変化するものが多い。したがって、自動車排ガスなどの排出基準は窒素酸化物(NOx)として定められているが、環境基準は二酸化窒素(NO2)として基準値が定められている。
注意喚起のための暫定的な指針となる値
/ちゅういかんきのためのざんていてきなししんとなるあたい
微小粒子状物質(PM2.5)の大気環境中濃度に関する値の一つであり、現時点での疫学的な知見を考慮して、健康影響が出現する可能性が高くなると予測される濃度水準を定めており、法令に基づかない注意喚起のための暫定的な値のこと。PM2.5の場合、日平均値が70μg/m3を超える可能性がある場合にその旨を周知することとされている。
注意喚起の判断方法について、「微小粒子状物質(PM2.5)に関する「注意喚起のための暫定的な指針」に係る判断方法の改善について(第2次)(平成26年11月28日;環境省水・大気環境局長)」では、午前5時から7時までの1時間値の平均値が85μg/m3を超過、または、午前5時から12時までの1時間値の平均が80μg/m3を超過した場合とされているが、判断方法は自治体によって異なる。
中央環境審議会
/ちゅうおうかんきょうしんぎかい
環境基本法の第四十一条第一項に基づいて設置される機関であり、環境大臣からの諮問に応じて環境保全に係る重要事項を審議することなどが所掌事項とされている。
環境保全に係る審議内容は多岐に亘るため、中央環境審議会令の第六条に基づいて環境保健部会や大気環境部会などの部会が置かれ、環境大臣からの諮問内容等に応じて関係する部会に付議するのが一般的である。この中央環境審議会の運営方法は、中央環境審議会議事運営規則に規定されているとおりであり、各部会はさらに小委員会(例:化学物質審査小委員会)や専門委員会(例:有害大気汚染物質排出抑制専門委員会)を設置して検討を行う場合が多い。
中央値
/ちゅうおうち
複数の数値を大小関係で並べた際に最も中央に位置する数値のこと。母集団が偶数個の場合は最も中央に近い二つの数値を算術平均した値である。 例えば、"5", "50", "500", "5,000", "50,000" という 5個の数値があるとき、平均値は"11,111"であるが、中央値は "500" である。
平均値と類似した概念で用いられるが、平均値は母集団の中にある極端に大きい数値の影響を受けやすい。このため、母集団の代表的な数値を示すためには平均値より中央値が適している場合がある。
中間処理施設
/ちゅうかんしょりしせつ
廃棄物の処理のうち、最終処分 (例:埋立) に至る前の中間的な処理を行うための施設のこと。脱水施設や焼却施設、破砕施設、中和施設などが代表的なもの。
中間処理施設のうち、廃棄物処理法が規定する一般廃棄物処理施設や産業廃棄物処理施設に該当する施設は、都道府県知事の許可を得ないと設置することができない。
産業廃棄物の中間処理施設は、産業廃棄物処理業者が設置するものに限らず、地方公共団体が設置する施設や、廃棄物の排出事業者が自ら処理するために設置する施設もある。特に汚泥の脱水施設では、そのような排出事業者が自家処理するための「事業者設置」の施設が多く存在している。
中間処理量
/ちゅうかんしょりりょう
廃棄物の処理のうち、最終処分(埋立処分等)を行うための前段階で行われる破砕や焼却などの処理が中間処理であり、その中間処理される廃棄物の重量を中間処理量という。我が国においては、産業廃棄物は年間に約4億トンの排出量があり、このうち中間処理量は約3億トンである。一方、一般廃棄物は例年約4500万トンの排出量に対し約4000万トンが中間処理されているが、東日本大震災では大量の災害廃棄物が発生し、平成24年度は通常の一般廃棄物とは別に1000万トン近い災害廃棄物の中間処理が行われた。
中間答申
/ちゅうかんとうしん
環境大臣等からの諮問に応じて中央環境審議会としての考え方をまとめて答えるものが答申であるが、諮問内容が多岐に亘るような場合は、一度の諮問に対して複数回の答申が出される場合がある。そのような場合、「諮問内容のすべてを網羅していない」という意味を込めて「中間答申」と呼ばれることがある。さらに多段階の答申が予定されている場合は、「第一次答申」、「第二次答申」などに分かれる場合もある。
超微小粒子状物質
/ちょうびしょうりゅうしじょうぶっしつ
⇒「ナノ粒子」を参照
地理情報システム (GIS)
/ちりじょうほうしすてむ (じーあいえす)
さまざまな情報を地理的な場所と関連づけ、それを地図上に表記して集計や抽出などを可能にしたシステムのこと。環境の分野においては、例えば工場毎の排出量データを工場の立地場所と関連づけ、地図上に排出量を図形等で表すことが考えられる。
同じ地図上に複数のデータを重ね合わせることが可能であるため、例えば工場毎の排出量データと汚染物質のモニタリングデータをGISに取り込み、両者の地理的な分布から関係性を明らかにすることが考えられる。
TEQ
/てぃーいーきゅー
Toxicity Equivalency Quantity(毒性等量)の略。ダイオキシン類は異性体によって毒性の強さが大きく異なる。このためダイオキシン類の濃度や排出量等を評価する際、毒性を有する29の異性体のそれぞれの質量に対して0.00003〜1の範囲で設定された毒性等価係数(TEF)を乗じ、最も毒性の高い異性体である「2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(2,3,7,8-TCDD)」の毒性に換算した値が一般的に用いられる。例えばダイオキシン類「1mg-TEQ」は、毒性の強さが「1mgの2,3,7,8-TCDD」と同等であることを示しており、実際には1mg以上の質量がある。
THC
/てぃーえいちしー
Total Hydrocarbon の略称で、メタンを含む全炭化水素のこと。一般的に、アルデヒド類などの含酸素化合物やアミン類などの含窒素化合物などは含まれない。
国は化学物質排出把握管理促進法(化管法)に基づいて、自動車等の排出ガスに含まれる対象化学物質の届出外排出量を推計する際には、一旦、THC排出量を算出し、各対象化学物質の排出量のTHC排出量に対する比率である対THC比率を乗じることにより、対象化学物質ごとの排出量を推計している。
ディーゼル機関
/でぃーぜるきかん
液体燃料(主に軽油や重油等のディーゼル燃料)により駆動する内燃機関のこと。冷却方法は、直接冷却方式、間接冷却方式及びラジエータ式があり、直接冷却方式及び間接冷却方式は冷却に大量の水を必要とするため、災害時等の断水時に施設内に貯水設備がない場合等はエンジンを稼働できない場合がある。なお、燃料は主にA重油だが、非常用の発電機では軽油を使用しているものも少なからずある(全体の4割程度)。
定格出力
/ていかくしゅつりょく
定められた条件下で発揮されるエンジン等の最大出力のことであり、kW(キロワット)などの単位で表される。
排出ガス規制を行う場合、エンジンの定格出力によってクラス分けを行い、それらのクラスごとに規制基準を設定するといった方法が採用されている。
低含有率物質
/ていがんゆうりつぶっしつ
製品中の含有率が低い(概ね1%未満の)成分は、いわゆる「製品の要件」に該当しないため、化学物質排出把握管理促進法に基づくSDSが不要で、PRTRの届出においても把握義務がない。このように、含有率が低いため届出対象とならない第一種指定化学物質を低含有率物質と呼び、そのうち、当該製品自体の取扱量が大きく排出量が無視できないものは届出外排出量として推計することとしている。これまで、石炭火力発電所で使用される石炭について、その燃焼に伴って生じる排ガス及び排水に含まれる対象化学物質の排出量が「低含有率物質」として推計されている。
農薬の有効成分など、他にも届出外排出量が推計されている低含有率物質があるが、それらは「農薬」など独立した排出源の一部として別途推計されている。
低含有率物質
/ていがんゆうりつぶっしつ
製品中の含有率が低い(概ね1%未満の)成分は、いわゆる「製品の要件」に該当しないため、化学物質排出把握管理促進法に基づくMSDSが不要で、PRTRの届出においても把握義務がない。このように、含有率が低いため届出対象とならない第一種指定化学物質を低含有率物質と呼び、そのうち、当該製品自体の取扱量が大きく排出量が無視できないものは届出外排出量として推計することとしている。これまで、石炭火力発電所で使用される石炭について、その燃焼に伴って生じる排ガス及び排水に含まれる対象化学物質の排出量が「低含有率物質」として推計されている。
農薬の有効成分など、他にも届出外排出量が推計されている低含有率物質があるが、それらは「農薬」など独立した排出源の一部として別途推計されている。
低公害車
/ていこうがいしゃ
従来のガソリン車やディーゼル車と比べて、大気汚染物質(窒素酸化物や粒子状物質など)の排出が少ない(又はまったく排出しない)、燃費性能が優れているなど環境への負荷が少ない自動車のこと。環境配慮型自動車、エコカー等と呼ばれることもある。
日本では、電気自動車、圧縮天然ガス(CNG)自動車、メタノール自動車、ハイブリッド自動車を指すのが一般的であったが、平成13年に定められた「低公害車開発普及アクションプラン」において、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(昭和54年施行)に基づく燃焼基準の早期達成車で、かつ「低排出ガス車認定要綱」(平成12年施行)に基づく低排出ガス認定車も、低公害車と呼ばれるようになった。
また、類似の概念として最近使われるようになった「次世代自動車」は、温室効果ガスの排出が大幅に減少した自動車として、燃料電池自動車やプラグインハイブリッド自動車などが該当しており、これは大気汚染物質の排出の大小は直接的には関係していない。
低周波音
/ていしゅうはおん
低周波音に対する明確な定義はないが、各国において一般的に100〜150Hz以下の周波数の音が低周波音とされている。我が国においては、環境省 の「低周波音の測定方法に関するマニュアル」で中心周波数1〜80Hz の音を低周波音(low frequency noise)、さらに20Hz以下の音を超低周波音(infrasound)とそれぞれ定義している。
低周波音の物理特性は100Hz以上の可聴音と同様であり、その音圧レベルは距離 に依存して減衰する(幾何減衰)。
定量化
/ていりょうか
「多い」や「少ない」といった定性的な情報だけでは排出量推計などを行うことが困難であるため、何らかのデータに基づいて(又は何らかの仮定を置いて)定量的な値として設定することを「定量化」と呼ぶ。
定量下限値
/ていりょうかげんち
化学物質の濃度分析において、試料中に含まれる対象化学物質が正確に定量できる最低保証濃度のことをいう。同じ分析方法における検出下限値(=化学物質の存在の有無を保証できる濃度の下限値)の3倍程度の濃度として設定される。定量下限値は分析方法や分析機器により異なり、また目的に応じて告示等で定められている場合もある。
環境基準値の超過の有無などを確認する環境計測の場合、定量下限値を環境基準値やその1/10の濃度に設定する場合も多く、分析結果の大半が「定量下限値未満」として報告され、実際の濃度の分布などの把握が困難となる場合がある。
適用対象 (※農薬に関して)
/てきようたいしょう
農薬における適用対象とは、農薬が使用される作物等の種類(又はその分類)のこと。農薬取締法に基づいて登録された農薬は、その使用が可能な作物等の種類が登録農薬ごとにあらかじめ指定されており、それ以外の作物等に農薬を使用することはできない。このような適用対象には「水稲」や「キャベツ」、「柑橘類」、「松」などが含まれる。PRTRの届出外排出量の推計では、「農薬適用一覧表」(一般社団法人日本植物防疫協会)に基づいて農薬種類ごとの適用対象を把握している。
電気事業法
/でんきじぎょうほう
電気事業の適切かつ合理的な運用により、電気の使用者の利益の保護や、電気事業の健全な発達を図ること、また、電気工作物の工事・維持・運用の規制により、公共の安全の確保や、環境の保全を図ることを目的とした法律(昭和三十九年法律第百七十号)。国の電力システム改革の3本柱である①広域的な送電線運用の拡大、②小売の全面自由化、③法的分離による送配電部門の中立性の一層の確保を押し進めるため、同法律の改正に係る3つの法律が、平成25年11月13日、平成26年6月11日、平成27年6月17日に成立している。
電気集じん機
/でんきしゅうじんき
集じん機の一種であり、線状のとがった電極上に生じる局所的な放電 (コロナ放電) を利用する。電気集じん機では、一般的に、放電装置として線状の放電線を用意し大気中の粒子を負に荷電することで、正に荷電した集じん板へ粒子を捕集する。また、対象とする粒子が乾燥している状態で集じんする乾式電気集じん機 (ホットコットレル) と、水の噴霧などにより粒子を水と一緒に集じんし洗い流す湿式電気集じん機 (ミストコットレル) とがある。 湿式電気集じん機は、放電線の電圧低下(逆電離)や粒子が再飛散しないため集じん性能が高いが、水処理施設が必要となる。
参考 : 新公害防止の技術と法規2014((社)産業環境管理協会)
透過
/とうか
樹脂製品やゴム製品等固形物のすき間を液体や気体が通過する現象のこと。自動車からの燃料蒸発ガスの排出は、キャニスタ(活性炭を入れた容器)の破過の他に、樹脂製タンクやゴム製燃料ホース等における燃料の透過によっても発生する。対策としてはホースの材質の変更や、燃料タンクの多層化が有効とされる。
動態
/どうたい
化学物質などが環境中に排出されたあと、時間の経過と共に化学物質の状態が変化する程度やその変化する方法のこと。例えば水環境中に排出された化学物質の場合、その後の動態としては「大気への蒸散」や「加水分解」、「魚類への蓄積」などが考えられる。
道路交通センサス
/どうろこうつうせんさす
道路ごとの自動車交通量や旅行速度等についておおむね3〜5年間隔で国土交通省により実施されている調査のことであり、正式には全国道路・街路交通情勢調査という。道路交通センサスには、全国の幹線道路の交通状況の調査を主とする「一般交通量調査」と、自動車オーナー等に対するアンケート調査により移動区間等を把握する「自動車起終点調査(OD調査)」がある。
特殊自動車
/とくしゅじどうしゃ
道路運送車両法又は道路交通法で定義された自動車の種別のひとつであり、これらの法律(それぞれの施行規則)ではそれぞれ「大型特殊自動車」と「小型特殊自動車」に分けて定義されている。建設工事に用いるブルドーザなどの建設機械、物品の輸送に用いるフォークリフトなどの産業機械、農作業に用いるトラクタなどの農業機械などが該当する。構内作業だけに使われるフォークリフトなども軽自動車税の課税対象となるため、道路走行しない場合でもナンバープレートを取り付ける必要があり、例外なく道路運送車両法の適用対象となる。
類似の車種区分として「特種用途自動車」もあるが、これは救急車や霊柩車、ごみ収集車など特種な用途に応じた設備を持つ自動車のことであり、「特殊自動車」とは意味が異なる。
国は、化学物質排出把握管理促進法に基づいて、上記のうち、排出量の把握が可能な特殊自動車について、建設機械、産業機械、農業機械に分けて対象化学物質の届出外排出量の推計を行っている。
特定化学物質
/とくていかがくぶっしつ
化審法の第一種特定化学物質と第二種特定化学物質の総称。化審法のもとで有害性や曝露状況等の審査を行い、人への長期毒性などの有害性が明らかになった場合に第一種特定化学物質や第二種特定化学物質に指定され、製造、輸入、使用について規制を受ける。 第一種特定化学物質と異なり、第二種特定化学物質では難分解性・高蓄積性といった条件に該当しない物質も指定される。
特定規模電気事業者
/とくていきぼでんきじぎょうしゃ
50kW以上の高圧電力の需要家(ビルや工場等)に対して電力を供給する事業者であり、東京電力等の一般電気事業者以外の事業者。なお、電気事業法の第2弾改正による電力自由化に伴い、一般電気事業者や特定規模電気事業者等、発電事業(省令で規定)を行う事業者は一律「発電事業者」と定義された。
特定第一種指定化学物質
/とくていだいいっしゅしていかがくぶっしつ
化学物質排出把握管理促進法の第一種指定化学物質のうち、発がん性や変異原性、生殖毒性の何れかを持つため、特に注意すべき物質として政令(化管法施行令)で規定されているベンゼンやニッケル化合物等のこと。特定第一種指定化学物質に該当するものは、製品中の含有率が0.1wt%以上でSDSの対象となり、年間取扱量が0.5トン以上でPRTRの届出対象となり、それぞれすそ切りが低く設定されている。
従来の特定第一種指定化学物質は「発がん性」を有する物質のみ選定されていたが、特定第一種指定化学物質等の選定基準が前記のとおり見直された結果、1,3-ブタジエンやホルムアルデヒドなどが特定第一種指定化学物質に追加され、現時点では15物質が指定されている。
特定ハロン
/とくていはろん
ハロンのうち、モントリオール議定書附属書AのグループIIに属する物質のことで、我が国ではオゾン層保護法に基づいて製造や使用などが規制されている。具体的には、ハロン-1211(CF2ClBr)、ハロン-1301(CF3Br)、ハロン-2402(C2F4Br2)の3物質が該当しており、既に製造等は全廃されているが、消火薬剤としての使用(回収、供給等)が続いている。
特定標的臓器毒性
/とくていひょうてきぞうきどくせい
肝臓や肺、眼等の臓器や血液や神経等の機能・形態に有意な変化や機能障害をもたらす性質のこと。
特別要件施設
/とくべつようけんしせつ
PRTRの届出要件の一つであり、物質ごとの年間取扱量による要件の代わりに、特定の施設が設置されている場合にPRTRの届出が必要とされる施設種類のこと。具体的には、以下の4種類が化管法施行令によって規定されている。
@鉱山保安法により規定される特定施設(金属鉱業、原油・天然ガス鉱業に属する事業を営む者が有するものに限る。)
A下水道終末処理施設(下水道業に属する事業を営む者が有するものに限る。)
B廃棄物の処理及び清掃に関する法律により規定される一般廃棄物処理施設および産業廃棄物処理施設(ごみ処分業および産業廃棄物処分業に属する事業を営む者が有するものに限る。)
Cダイオキシン類対策特別措置法により規定される特定施設
但し、これらの施設を設置している事業者であっても、従業員数の要件を(Cの場合は業種の要件も)満たしていないときは、PRTRの届出は求められていない。
トップダウン式
/とっぷだうんしき
トップダウンとは「上から下に」という意味で、意思決定の手順などを表す場合に使われる用語であるが、その手順へのアナロジーとして、PRTRでは排出量推計の手順を表すときに「トップダウン式」という表現を使っている。具体的には、化学物質の環境中への排出量などを推計するとき、製品ごとの全国出荷量など、推計対象の全体の数量を表すパラメータを使った推計方法のことを表す。別の推計方法を表す「ボトムアップ式」と対比して使われる。
全国出荷量などのパラメータは、一般に不確実性の小さなパラメータであるため、トップダウン式の推計方法が採用可能であるときは、ボトムアップ式の推計方法に比べて信頼性が高いことが多いと考えられている。
届出外排出量
/とどけでがいはいしゅつりょう
化学物質排出把握管理促進法に基づく我が国のPRTR制度において、届出排出量以外の排出量として、同法の第9条に基づいて国が推計した排出量のこと。省令に基づき「対象業種」、「非対象業種」、「家庭」、「移動体」の4区分で排出量が推計・公表されるとともに、「農薬」や「塗料」、「自動車」といった排出源ごとの排出量も推計・公表されている。
この届出外排出量は、農薬や塗料といった排出源ごとに製品の全国出荷量や含有率、排出率等の調査を行い、さまざまな仮定を置いて推計するのが一般的であり、これまで21種類の排出源を対象として排出量の推計結果が公表されてきた。このように数多くの排出源を対象として届出外排出量を推計・公表しているのが、我が国のPRTR制度の大きな特徴の一つとなっている。
届出事項
/とどけでじこう
PRTRの場合、届出書や別紙に記載すべき事項として、事業所の業種名や物質ごとの排出量などを指す。改正後の化管法施行規則(H22年4月1日施行)では、届出事項として「廃棄物の種類」、「廃棄物の処理方法」、「移動先の下水道終末処理施設の名称」の三つが追加された。
届出排出量
/とどけではいしゅつりょう
PRTRの場合、化学物質排出把握管理促進法第5条第2項に基づき事業者から届出される事業所別の化学物質排出量のことを指す。化学物質排出把握管理促進法第9条に基づいて推計される届出外排出量と対比して「届出排出量」と呼ばれる。PRTRでは「排出」と「移動」は区別されるため、届出排出量の中には届出される移動量は含まれない。
取扱量
/とりあつかいりょう
化学物質の「製造」、「使用」、「その他の取扱い」の対象となる数量のこと。化学物質排出把握管理促進法によるPRTRの届出が必要となる第一種指定化学物質等取扱事業者の要件の一つとして、事業所ごとの1年間の取扱量が1トン以上などの要件が規定されている。
この取扱量は、事業者が排出量を把握するための最も基本的な情報となる場合が多い。そのため、化管法見直しの検討段階では、この取扱量を届出事項に追加する必要性が議論されたものの、その取扱量データの活用方法として合意に至らず、見送られた経緯がある。