HOME > 事業内容 > 平成27年度船舶・航空機排出大気汚染物質削減に関する検討調査
最終更新日:平成28年7月13日
環境省
船舶及び航空機から排出される大気汚染物質が発生源周辺の大気環境に与える影響を把握するため、シミュレーションモデルを用いた濃度分布の予測、影響評価に関する先行研究の調査、過年度調査における実測結果の再解析を実施した。
また、船舶及び航空機の排出ガス規制等に係る国際的な動向を把握するため、IMO及びICAOにおける会議資料を中心に知見の収集を行った。
航空機エンジン起源のUFP(超微小粒子)に関する影響評価方法を構築する際、考慮すべき事項等を把握するため、関連する先行研究を調査・整理した。航空機エンジンからの粒子状物質の調査については、米国航空宇宙局(NASA)、米国環境保護庁(EPA)、米国国防総省(DoD)による測定キャンペーンであるAPEX(Aircraft Particle Emissions eXperiment)があり、この調査に関連した論文が多数報告されていた。
航空機UFPの影響評価方法を検討するにあたり、平成23年度調査にて実施した成田国際空港の結果及び航空機の運航データを再整理した。粒子数のデータでは、航空機の離着陸回数が多く、滑走路から実測地点に向けた風が卓越した時間帯にスパイク状のピークがみられ、航空機の影響が示唆された。また、スパイク状のピークがみられた時間帯とそれ以外の時間帯に分けて粒径別の粒子数を集計した結果、ピーク時に粒子数が増加するのは粒径10〜100nmの範囲と限定的であり、粒径が小さいほど時間帯による差が大きく、10nm付近では約2桁の差があった。
青線(平常時):実測結果からスパイク状のピークがみられなかった時間帯の粒径別の平均粒子数。
赤線(ピーク時):実測結果からスパイク状のピークがみられた時間帯の粒径別の平均粒子数。
【平常時とピーク出現時の平均粒径分布】
航空機から排出されるUFPが空港周辺の環境に与える影響を把握するための方法を検討するため、現時点で利用可能なデータ、及び前述した実測結果から算出した排出係数を用いてEDMS(シミュレーションモデル)により空港周辺の粒子数の濃度分布を予測した。また、過年度の実測期間中を対象として再現性を確認した結果、濃度変化の傾向は概ね一致したが、濃度レベルは±1〜2桁程度の差があった。日平均値で比較すると、10〜90%程度、実測結果の方が高かった。
UFPは肺の深部の肺胞領域に最も沈着しやすく、UFPに付随する可溶性化学物質が肺胞から体内に吸収される可能性が報告されており、呼吸器系だけではなく全身への影響が指摘されている。本調査では、航空機から多量のUFPが排出されていることを踏まえ、先行して調査が進められている自動車起源のUFP(ナノ粒子に関する事例も含む)の健康影響に関する文献調査を中心に知見を収集、整理した。
航空機排出ガスに係る国際的な排出規制および対策の動向を把握するため、2016年2月1日から12日にカナダのモントリオールで開催された第10回CAEP(CAEP/10)における議題のうち、PMの排出規制に係る動向を中心に調査した。
過年度調査では、航行中の船舶から排出される大気汚染物質の影響を把握するため、東京湾浦賀水道近傍で実測調査を実施した。その結果、船舶排ガスの影響が示唆されたため、今年度調査では船舶排ガスの影響をより定量的に把握することを目的として、実測期間中のAIS(自動船舶識別装置)ライブマップから船舶排出量を推計し、シミュレーションモデル(数値解、解析解)を用いた予測を実施した。
予測結果について、NOは比較的近い濃度レベルであり、時間変化の傾向も一致したが、NO2及びSO2については計算結果が大幅に過大であった。O3は、変化傾向は一致したが、最大となる時間帯の濃度は計算結果の方が過大であった。また、船舶の排出量をゼロとして計算した結果、実測地点における各物質の予測結果は大幅に低下したため、実測地点は主に船舶の影響によって濃度が決まると予想された。
船舶から排出される大気汚染物質が周辺の大気環境等に与える影響に着目した先行研究(主に国外のジャーナル)を調査し、主な知見及び課題等を体系的に整理した。
船舶排出ガスに係る国際的な排出規制および対策の動向を把握するため、IMOにおいて船舶排出ガスに係る規制、対策等に係る検討が行われるMEPC(海洋環境保護委員会)会合及びPPR(汚染・防止対応小委員会)会合を対象として審議内容等を調査した。
* 図の出典:「平成27年度船舶・航空機排出大気汚染物質削減に関する検討調査報告書」
株式会社 環境計画研究所、平成28年3月