HOME > 事業内容 > PRTRデータを用いた水銀等の排出インベントリ等検証業務
最終更新日:平成27年5月25日
国立研究開発法人 国立環境研究所
国立研究開発法人 国立環境研究所では、水銀、鉛、カドミウム等の有害金属類について、排出インベントリ及びマテリアルフローを継続的に把握するために有効な手法の構築に関する研究を実施している。H26年度の業務では2つの調査を実施した。ひとつはPRTRデータによる水銀大気排出インベントリの捕捉率の算出。もうひとつは下水道業からの公共用水域への水銀の排出を対象に、定量下限値未満の実測値の取扱いが、PRTR届出排出量に与える影響の分析である。
PRTRデータによる水銀大気排出インベントリの捕捉率を算出するために、先ずはインベントリのセクターと、PRTR対象業種の対応付けを行った。「石炭火力発電所」など、インベントリのセクターによっては複数のPRTR対象業種が対応するため(電気業、パルプ・紙・紙加工品製造業)、乾炭消費量等のデータを用いて業種別構成比を算出し、排出量の配分を行った。
対応付けの後、インベントリとPRTRデータ(届出データ、届出外排出量)の水銀排出量を比較することで捕捉率を算出した。
インベントリセクター | 水銀排出量 (t/年) |
PRTR 対象業種 |
水銀排出量 (t/年) |
水銀排出量 (t/年) |
|||
上限 | 下限 | 上限 | 下限 | 上限 | 下限 | ||
石炭火力発電所 |
0.83 |
1.00 |
パルプ・紙・紙加工 品製造業 |
1.9 % |
− | 0.02 | 0 |
電気業 |
98.1% |
100% | 0.81 | 1.00 |
|||
・・・ |
PRTR 対象業種 |
水銀排出量(t/年) | PRTRデータによる 捕捉率 |
|||
インベントリ | PRTR データ |
||||
上限 | 下限 | 上限 | 下限 | ||
パルプ・紙・紙加工品 製造業 |
296 |
281 |
− | − | − |
化学工業 |
187 |
187 |
0.03 |
0.02 % | 0.02 % |
電気業 |
|||||
・・・ |
過年度に実施したアンケート調査により、下水道業に属する大半の事業所(下水処理施設)では、定量下限値未満の実測値を用いて放流水の平均水銀濃度を算出し、放流水量に乗じることで公共用水域への届出排出量を算出していることが明らかとなっている。また、事業所ごとに設定している定量下限値や、定量下限値未満の実測値の扱い(定量下限値の1/2とみなす、ゼロとみなす、など)が異なることも併せて確認されている。
そこでアンケート調査の結果等を基にモンテカルロシミュレーションを行い、下水道業における公共用水域への水銀の届出排出量の発生確率分布を作成することで、定量下限値や定量下限値未満の実測値の扱いが一定でないことによる、PRTR届出排出量の不確実性を評価した。
※ 「有害金属のPRTR届出排出量算出方法等実態及びマテリアルフロー調査業務報告書
(委託元:独立行政法人国立環境研究所)」から一部抜粋して使用している。