HOME > 事業内容 > 平成28年度船舶・航空機排出大気汚染物質の環境影響把握に関する検討調査
最終更新日:平成29年6月26日
環境省
船舶及び航空機から排出される大気汚染物質が周辺の大気環境に与える影響を把握するため、シミュレーションモデルを用いた濃度分布の予測、影響評価に関する先行研究の調査、過年度調査における実測結果の再解析を実施するとともに、今後の実測調査に係る方針を検討した。
船舶及び航空機の排出ガス規制等に係る国際的な動向を把握するため、IMO及びICAOにおける会議資料を中心に知見の収集を行った。
過年度に実施した浦賀水道近傍における実測調査について、実測地点周辺の常時監視データ等を活用しつつ追加的な解析を実施した。
解析の結果、浦賀水道付近の測定局では海側から風が吹く際にSO2の濃度が高くなる傾向がみられ、特に日中に濃度が高くなることが示された。また、風向・時間帯による平均濃度差からSO2に対する船舶排ガスの影響濃度を推定した結果、神奈川県側で2.65〜2.79ppb(寄与割合:50.3〜55.7%)、千葉県側で3.40〜4.01ppb(69.0〜73.0%)であった。同様に実測結果を用いて神奈川県側と千葉県側の濃度差から浦賀水道における船舶排出量を推定した結果、1.5ppbと推定された。
一方、平成27年度調査において、数値解モデルであるADMER-PROを用いて実測期間中の各大気汚染物質の濃度分布を予測した結果、NO2やSO2の予測結果が実測結果に対して大幅に過大であったため、今年度は排出量及び計算条件の見直しを実施した。見直しの結果、予測結果は実測結果に近い濃度レベルとなり全体的に改善したが、一部の期間や時間帯において予測と実測に顕著な差がみられた。
航行中の船舶から排出される大気汚染物質が、周辺の大気環境に与える影響を把握するための実測調査方針について検討した。対象地域は山口県と九州の間に位置する関門海峡とし、付近の常時監視データ及び気象データの解析、発生源分布や地形等の調査を実施し、実測に適した季節や地点、測定項目を検討した。
船舶排出ガスに係る規制、対策等の国際動向として、過年度と同様にIMOにおける審議の状況等を公表資料等から調査し、本調査に関係する内容を抜粋してとりまとめた。
平成27年度に引き続き、ICAOにおける排出規制の検討状況及び過年度の検討結果を踏まえ、飛行場から排出される大気汚染物質の影響程度、範囲を把握するための評価手法を検討した。
今年度は平成27年度調査における課題を踏まえ、一部計算方法を追加するとともに、今後、航空機排出ガスの影響程度・影響範囲を的確に評価するために取組むべき課題を抽出し、その課題に対する対応方針を整理した。
航空機排出ガスに係る実測調査方針を検討するにあたり、対象とする飛行場や調査項目等に対する基本的な考え方を検討、整理するとともに、飛行場内及び飛行場周辺において実測調査を実施した先行研究を中心に文献調査し、知見や課題を整理した。
いずれの文献においても、航空機の離着陸に対応してUFP(超微小粒子)の粒子数が大幅に増加することが示されていた。その他、40km離れた地点においても影響を与えている可能性があると、風速に対して逆U字型の分布となり風速4〜5m/sのときに最も濃度が高くなること、季節によって粒子数がオーダーレベルで異なること等が示されていた。
航空機排出ガスに係る規制、対策等の国際動向として、過年度と同様にICAOの動向を中心に調査した。また、近年UFPの健康影響に関する文献が多数報告されていたため、それらについても結論部分を中心に整理した。
* 図の出典:「平成28年度船舶・航空機排出大気汚染物質の環境影響把握に関する検討調査業務報告書」株式会社 環境計画研究所、平成29年3月