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「油」とは?             1/2

文責 : 菅原 玲
平成30年6月25日

最近のできごと

 2018年1月6日に、東シナ海(上海沖)で、パナマ船籍(イラン国営会社所有)の石油タンカー「サンチ(Sanchi)号」が香港船籍の貨物船「CFクリスタル(CF CRYSTAL)号」に衝突し、約一週間にわたり油を流出しながら炎上漂流を続け、沖縄の北東約300kmの海域で沈没するという事故が起きた。

 サンチ号が積載していた油は、天然ガス・コンデンセート(natural gas condensate)と呼ばれる軽質の原油(天然ガスを採取する際に凝縮分離した液状炭化水素)約136,000トンであり、これが海域へ流出されることとなった。

 ここでは、上記の流出事故と直接的な関係はないが、当社の業務で関わっている「油」や「有害液体物質」の海上輸送に関する規則(特に物質の分類)について「気になること」を紹介する。

※ なお、サンチ号の衝突事故については、流出した油の有害性が高いこともあり環境への影響が懸念されているところであるが、今回の本題とは直接関係がないため、ここでは割愛する。事故の詳細や対応については、関連省庁のウェブページやBBC、Wikipedia等の記事を参照されたい。

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液体物質の海上輸送に関する規則

 船舶の航行や事故による海洋環境汚染の防止に関する国際条約として、「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書(MARPOL73/78)」(以下「マルポール条約という。」)が挙げられる。
(ここではマルポール条約の制定・改正の背景については省略するが、上記の事故のような油タンカーの座礁事故(例えば、1967年のトリー・キャニオン号座礁事故や1989年のエクソン・バルディーズ号座礁事故)による油流出が大きなきっかけとなっている。)

 マルポール条約は現在、一般的な義務や適用対象等を規定する「本文」、有害物質の排出に関する通報義務や手続き等を規定する「議定書」のほか、排出基準等を規定する6つの「附属書」(表1)から構成されており、「油」や「有害液体物質」もその規制対象となっている。

  • 表1 マルポール条約の附属書
附属書番号 内    容
T  油による汚染の防止のための規則
U  ばら積みの有害液体物質による汚染の規制のための規則
V  容器に収納した状態で海上において運送される有害物質による
 汚染の防止のための規則
W  船舶からの汚水による汚染の防止のための規則
X  船舶からの廃物による汚染の防止のための規則
Y  船舶からの大気汚染防止のための規則

 

 日本もマルポール条約に批准しており、その内容は 「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」(以下「海防法」という。)で担保されている。

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「油」と「有害液体物質」の定義

 「油」と聞くと、一般的には料理用の油(サラダ油、オリーブオイルなど)やガソリン、ディーゼル油などが思い浮かぶかもしれないが、「有害液体物質」という言葉は日常生活ではあまり馴染みがないかもしれない。
 「有害液体物質」というのは、「メチルアルコール」や「ベンゼン」などのいわゆる「化学製品」と呼ばれるものが大半を占めているのだが、実は上記の「オリーブ油」など一般的には「油」だと思われるようなものでも「有害液体物質」に分類されているものが多数存在する。

 それではそもそも「油」や「有害液体物質」とは何か?というと、マルポール条約や海防法では、「油」(Oil)や「有害液体物質」(Noxious Liquid Substance)という概念は表2のとおり定義されている。

  • 表2 「油」と「有害液体物質」の定義
項目 定義 規則 備考


(Oil)

原油、重油、スラッジ、廃油、精製油その他のあらゆる形態の石油(附属書Uの適用を受ける石油化学物質を除く。)をいい、付録Tに掲げる物質を含むが、これらに限られない。 マルポール条約 附属書T
第1規則第1項
  • ・ 左記の「付録Tに掲げられる物質」としては、「ディーゼル油」、「軽油」、「ガソリン」、「ナフサ」等が挙げられる。
  • ・ 和訳は「海洋汚染防止法 2013年改訂版【英和対訳】」(海文堂, 2013)による(原文は省略)。
原油、重油、潤滑油、軽油、灯油、揮発油その他の国土交通省令で定める油及びこれらの油を含む油性混合物(国土交通省令で定めるものを除く。以下単に「油性混合物」という。)をいう。 海防法
第3条第1項
第2号
  • ・ 左記の「国土交通省令で定める油」としては、「アスファルト」等が挙げられる。
  • ・ 左記の「国土交通省令で定めるもの」としては、「潤滑油添加剤」等が挙げられる。

有害液体物質
(Noxious Liquid Substance)

国際バルクケミカルコード第17章及び第18章の汚染の種類の欄に掲げる物質又は第6規則3の規定によりX類、Y類又はZ類として暫定的に査定される物質をいう。 マルポール条約 附属書U
第1規則第10項
  • ・ 詳細は割愛するが、液体のいわゆる化学製品を海上輸送する場合は、事前に有害性に関する査定を受けて「国際バルクケミカルコード」に掲載されなければならないこととなっている。
  • ・ 和訳は「海洋汚染防止法 2013年改訂版【英和対訳】」(海文堂, 2013)による(原文は省略)。
油以外の液体物質(液化石油ガスその他の常温において液体でない物質であつて政令で定めるものを除く。次号において同じ。)のうち、海洋環境の保全の見地から有害である物質(その混合物を含む。)として政令で定める物質であつて、船舶によりばら積みの液体貨物として輸送されるもの及び (略) をいう。 海防法
第3条第1項
第3号
左記の「常温において液体でない物質であって政令で定めるもの」としては、「アンモニア」、「液化メタンガス」、「塩素」、「窒素」等が挙げられる。

 

 つまり、ここでいう「油」というのは、いわゆる「石油」に近いものであり、それ以外の液体物質(関連規則で指定されているもの)が「有害液体物質」といった仕分けになっている。
 このような分け方になっているのは、当初は、主として石油タンカーから(事故などにより)排出される原油等による海洋汚染の防止を目的として規則が作られ、その他の液体化学製品に関する規則はそれとは別に(後で)作成されたという経緯が影響していると思われる。

 なお、マルポール条約では「有害液体物質」が「油」から除外されているのに対し、海防法では「油」が「有害液体物質」から除外されており、定義の仕方が異なっているが、その点についてはここでは触れないこととする。

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