環境省の請負調査「水質環境基準健康項目等基礎調査業務」の一環として、関東近郊(埼玉県・東京都・山梨県・神奈川県)の沢水を対象として硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素に係る水質調査を行いました。(平成27年1月20日〜23日)
「飲用される可能性のあること」を条件に、実際に現地を確認して、採水地点を選定しました。ここでは、選定した採水地点のうちの幾つかをご紹介します。
※ ここで紹介する沢水の外観はいずれも透明度の高い清涼な水ですが、山中には野生動物も
生息していることから、沸騰・消毒した後で飲用することが強く推奨されます。
日本の滝100選の一つである「払沢(ほっさわ)の滝」から流れ出す沢の水を採水しました。沢水は檜原村の簡易水道源として利用されており、滝の下流の淵では取水場や水道管が見られました。沢沿いには遊歩道が整備されており、払沢の滝まで手軽に行けることから、一年を通してハイカーの姿が見られます。 沢と北秋川の合流地点は深い渓谷になっているため水面の様子を見ることはできませんが、滝に近い上流では遊歩道が水場のごく近くになるため、水の澄んだ様子がよく分かります。しばらく水面を眺めていると、魚(おそらく、ヤマメと思われる)が泳ぐ姿も確認できました。
左:簡易水道源と利用されている沢水(東京都) 右:取水場付近
埼玉県の名水として有名な「生川(うぶがわ)の延命水」です。武甲山麓の採石場を抜けると石灰岩の真っ白な景色が一変して静かな林道になります。「生川の延命水」は林道脇の山からの湧水で、この段階では水量はさほど多くはありません。水汲みが容易なように、竹の樋やパイプが設置されており、コップやポリタンクを置くためのスノコまで整備されていました。湧水は沢を下り、武甲山から流れてくる生川へ合流していました。夏場でも冷たい水を汲むことができるため、遠方からはるばるこの水のために来る人も少なくないとのことでした。
左:沢の様子、右:取水場の様子
甲州ワインやミネラルウォーターのイメージのある山梨県ですが、実際に水がとてもきれいなところでした。県道413号線を東に走っていくと神奈川県と山梨県の県境から景色が一変します。通称、「道志みち」とも呼ばれる県道沿いには道志川が流れており、道の両側の木々に囲まれた山並みが印象的でした。 採水地点は、山道を15分ほど車で登ったところにあった沢にしました。まさに「自然のなかの沢」という印象で、水は非常に澄んでいました。現地の人に話を伺ったところ、昔は集落ごとに山の水源が管理されており、そこからの水を利用して生活していたそうです。
道志川から望む県道413号線
道志川流域の山奥の沢の様子
観光名所になっている秦野市丹沢の護摩屋敷の水です。水を汲みに来る人が絶えず、現場踏査中もペットボトルに水を汲みにやってきている人がいました。丹沢は水がきれいなことで有名で、護摩屋敷の水の近くには山中から引っ張ってきた湧水のコーヒーをだしている喫茶店や、湧水を水飲み場として活用しているキャンプ場もありました。水循環基本法が成立して間もない頃でもあったので、水は私達の生活と密接に関わる重要な資源であり、それを保護することの重要性についても改めて考えさせられました。