環境省の請負調査「嘉手納飛行場周辺における大気汚染物質に関する実測調査業務」にて、沖縄県の嘉手納飛行場が周辺の大気環境に与える影響を調査しました。(平成25年9月19日〜25日)
調査対象地域である沖縄県中頭郡嘉手納町(おきなわけんなかがみぐんかでなちょう)は、極東最大の米軍飛行場である嘉手納飛行場を抱える町です。 同地域では、町の面積の約83%が嘉手納基地として接収されている状況にあり、かねてより米軍機に係る騒音や悪臭、基地からの原油流出等の環境汚染事故が問題となっています。
本調査では、そのような背景も踏まえ、嘉手納飛行場滑走路に近接する住宅地域内の4個所に調査地点を設け、大気汚染物質の実測調査を実施しました。
資料提供者:嘉手納町
嘉手納町の位置
作業小屋の設置の様子
作業小屋の設置の様子です。嘉手納飛行場が高台に位置していることや、沿道の自動車の排出ガスの影響を避けるために、建物の屋上に測定機器を設置しました。
小屋と測定機器は、いったん部品レベルで分解したものを大勢の調査員(10名程度)でいっきに屋上へ運び組み立てます。
当日は日差しが強く、長そでの作業着を着ながら作業をしていると汗だくになるほどでした。
調査の様子(大気汚染物質、風速・風向)
大気汚染物質のほかに、自主的に簡易的な風向風速の観測も同時に行いました。風向風速計は、電子式の記録計(ロガー)により1分間隔で測定結果を記録することができる優れものです。
調査の様子(飛行場の離発着状況の目視観測)
さらに、嘉手納飛行場に隣接する「道の駅かでな」 (嘉手納町の歩みや基地との関わり等を紹介している観光スポット) の展望場から飛行場の離発着状況の目視観測も自主的に実施しました。
現場状況
ある学校施設では、屋上へ上がるために人ひとりが通れるほどの穴をくぐり抜け、屋上に測定小屋を設置しました。機器の材料は外壁からロープを使用し釣り上げて組み立て、作業には丸一日を要しました。
また、写真にあるように、調査開始前と開始後に施設内のメーターをチェックし、施設管理者へ電力料金をお支払いしました。こういった細かな調整が現場では大変だったりします。
大気汚染の調査は平成25年9月に実施しましたが、翌年2月に再度嘉手納町へ訪れたときには、嘉手納飛行場の駐機場前面に位置する機体(対潜哨戒機)がP-3オライオン(P-3C)からP-8Aポセイドン(P-8A)へ変わっていました。駐機場に近接するニライ消防本部の方によると、周辺地域への騒音を軽減するために、平成25年末ごろにP-3Cの代替機としてP-8Aが導入されたそうです。
対潜哨戒機P-3オライオン(P-3C) (平成25年9月)
対潜哨戒機 P-8Aポセイドン(P-8A) (平成26年2月)
※ 写真の手前側に位置している機体がP-8A。
嘉手納町では、かねてより嘉手納飛行場からの航空機騒音が問題となっています。調査を行った期間中も第3次嘉手納基地爆音差止訴訟の裁判が行われていました。右の写真は、道の駅かでなに設置された「いもっち(嘉手納町が普及の発信源と言われるサツマイモに因んだキャラクター)」で、左手にあるボタンを押すとその時点の騒音レベルを測定してくれます。現地で撮影をした際の騒音レベルは70dB(幹線道路沿道での昼間の環境基準値に相当する大きさで、騒々しい街中や車両の多い国道沿いでの騒音の大きさ)でした、道の駅の事務員の方によれば、高いときは90dB (パチンコ店の店内での騒音の大きさ)に達することもあるようです。