HOME > 事業内容 > パラグアイ国地域と歩む学校づくり支援プロジェクト
最終更新日:平成26年6月12日
独立行政法人 国際協力機構(JICA)
パラグアイ共和国政府は1994年の「パラグアイ2020」により教育改革に着手し、さらに、2009年の「国家教育計画2024」(教育文化省(MEC))により一層の教育改革の充実に取り組んでいる。改革の成果の一つとして就学前教育(1年)及び初等教育(9年)の無償・義務化が進められた一方で、教育の質・アクセス・効率性・公平性等と同等の重要性を持つ学校運営管理の改善への取り組みはさらに強化する必要があるとされる。
同国では、都市―農村間の教育の質には依然として大きな格差があり、その是正に向けた農村部の教育の質向上は、上述の「国家教育計画2024」において「戦略2すべての教育段階/学校類型で質の高い教育を提供する」として言及されている。近年、パラグアイ共和国政府は地域の特徴に応じた開発「テリトリアル・アプローチ」を推進しており、その一環として教育部門においても、初等教育段階から地域の特徴・要請に応じた教育活動の実践が求められている。
教育文化省が定める教育課程では、基礎教育学校は「地域の特徴に応じた教育活動の最適化」のために「学校カリキュラム計画(PCI)」を作成し、これを学校教育計画(PEI)に含めることとされており、併せて年間活動計画(POA)の作成も進めている。近年「テリトリアル・アプローチ」の推進を背景に、同省はその実践の周知徹底に本格的に取り組み始めている。しかしながら、PCIは90年代より存在するにもかかわらず、既往の作成要領が概念的で具体的な事例に乏しいため、未だほとんどの学校において策定されていないのが現状である。パラグアイ共和国政府要請の背景としては、PCIを含むPEIに基づく学校運営管理を通じて、地域の特徴に応じた教育の学校レベルでの実践を推進していくとの教育文化省の意向があることが確認された。
以上のことから、本プロジェクトでは、先行案件の成果を土台に、対象県(イタプア県、カアサパ県、カグアス県、アルトパラナ県)においてPCIを含むPEIを活用して地域の特徴を活かした学校運営管理が行われるべく教育文化省の活動を支援することとなった。
また、上記PCIを整備すると同時に地域に根差した教育の実践についてのニーズも高く、特に農村部での環境教育、農業教育の導入を望む声が大きく、地域に根差した教育活動として、初等教育の段階から地域の持続的な生産に結びつく基礎的な教育を導入する方向でプロジェクトを進め始めている。
同国では、基礎教育学校は、教育文化省の通達に従い年度当初にPEI/POAを作成/改訂し、それに従って学校運営にあたることが義務付けられているが、先行案件(2006年〜2009年)の対象地域ではPEI/POAが広く活用されているほか、同対象地域以外でも先行案件終了後に教員養成校(IFD)及び地域教育センター(CRE)が校長研修を積極的に実施していること(全国40校のIFD/CREのうち27校で校長研修を実施)等が確認されるものの、カアサパ県教育技術調整事務所では、2012年にPEI/POAを提出した中央校は全体の約60%に留まるなど、IFD/CREが研修を実施していない地域もしくは同研修を受講していない学校も少なくなく、PEI/POAの実践が限定的である現状が確認されている。さらに、教育文化省内の関係部署間の連携が不十分で、学校によるPEI/POA実践へのモニタリング機能が不全である。プロジェクトではイタプア県、カアサパ県、カグアス県、アルトパラナ県の計4県において地域の教育省のスーパーバイザーや教員養成校のチューターを対象に、上述の問題点改善に向けた研修をパラグアイ教育文化省側と共に進めている。併せて、他プロジェクトとも連携しながら、地域の視点を取り入れた環境教育や農業教育について導入促進を行っている。