HOME > 事業内容 > 対ハイチ農業技術研修コースプロジェクト専門家派遣(農業普及)
最終更新日:平成26年6月12日
独立行政法人 国際協力機構(JICA)
ハイチ共和国では、国民の大半が農業従事者であるが、農業人口の80%以上は自給できない状況にある。そして、食糧価格高騰に起因する暴動、相次ぐハリケーン通過、さらに2010年1月のハイチ地震等、困難な状況に直面するなか、農業・農村開発の分野は同国の政策の中で最重点分野とされ、中長期的視点から復興支援が求められている。日本はハイチ共和国の隣国のドミニカ共和国に対し、農業分野での協力実績が豊富であるため、ハイチ共和国の農業技術者を対象にドミニカ側での研修実施を主体とした技術協力プロジェクトが提案され、計20分野を越える内容の研修がISA大学内で日本との協力の下に実施し、これと前後してハイチ側の対象地域で追加指導・研修修了者の実施体制の整備等のフォローアップ活動を3カ国共同で実施した。
本業務は主として、ドミニカ共和国におけるハイチ人普及員対象の農業研修の実施に係るもの、及び研修修了者(普及員)のハイチ国内(中央県)における活動のフォローアップ活動に関するものの2本の柱から成る。研修参加者の普及員は、ハイチ共和国において対象地域で活動するNGOとハイチ農業省の職員を対象とした。
研修教科は以下の分野に関して座学、実習、学外見学会を組み合わせて行い、いくつかの分野ではISA大学外の教員の協力を得て実施した。
また、研修修了者(普及員)のハイチ国内(中央県)における活動のフォローアップ活動に関しては、定期的に日本側の専門家と共にISA大学の教員、ドミニカ共和国農業省、ハイチ農業省の関係者が研修修了者の各所属団体(NGO・政府機関)を回りモニタリングを実施し現地指導を行うと同時に相互の情報交換を促進する目的から研修修了者の参加のもとにワークショップ、報告会、現地実習を行った。
本プロジェクトの対象地域であるハイチの中山間部の地域では、収奪的農業生産を続けてきた影響で著しい自然環境の劣化がみられる。多くの場合、小規模農家は土壌有機物の施用に消極的であり、農地の土壌劣化の原因となっている。山間部ではヤギの過放牧の問題と相まって、無秩序な焼畑や野焼き、家畜による食害の影響もあり森林の減少が著しい。傾斜地農業地帯では階段畑等は作られず、また一般には等高線栽培も導入されていないため、雨水は土壌中に浸透する割合が少なく、豪雨の際などには、雨水は表流水となって劣化土壌の表層を削り取りながら流れ、次第に表土を流失させた結果、岩肌がむき出しになっている畑地も随所にみられる。土壌劣化と森林の減少は土壌の保水性を減少させ、ひいては土壌涵養水の減少をもたらし、乾季の農業用水の不足は深刻になっている。一方、雨季やハリケーン上陸時には、土壌流亡やエロージョンが引き起こされ耕土は失われ、これが持続可能な農業生産を阻害している。このことは農業生産に対する負の影響だけでなく、自然災害を引き起こす要因にもなっており、ハリケーンが通過する時期にはハイチの山間部では土砂崩れなどの被害が多く、他方、下流域では急激な増水で河川が氾濫し毎年、甚大な被害をもたらしている。
こうした状況下、自然環境の保全と自然災害の防止及び安定した農業生産は、共通の問題となっており、本件では小規模農家が持続可能な農業を続けられるようになる点に着目してプロジェクトを遂行した。地域を巡回指導する普及員の基礎的な技術の定着を促し、水土保全の重要性、さらに土壌有機物施用の有効性について理解を深める必要性から普及員対象の研修とフォローアップ活動を進めた。